第8章 ラプンツェル…少女の物語♥♥
****
洞の中で横になって丸くなり、マドカは腹部に両腕を回していた。
ザアッ…ザザ────────……
(………また降ってる)
今の季節は雨が多いようだ。
昼間でさえ気が滅入るが、これから来る夜はもっと嫌いだ。
昼ごろに洞にやってきたなじみの男をマドカは断った。
好色そうな顔をした男はなかなか諦めなかった。
「なんだよ、最近冷てえじゃねえか。 ハアン? とうとう色っぽい話でもあったのかい」
「色っぽい話?」
怪訝な表情で繰り返す彼女の襟元に手を差し入れる。
「違うのか? ま、そんなんなら、こんなとこに女一人でいるワケねえからな」
乱暴に胸をつかまれ、マドカが顔をしかめた。
彼の言った内容はやや不可解だったが「血が出ているから」そう告げると舌打ちをして雨の中を帰っていった。
「待ちなよ。 梯子を忘れてる」
マドカは呼びかけたが、男はそのまま去っていった。
しばらくの間ぼんやりと男の後ろ姿を見送り、ふと、眼下を覗き込む────掛けられた梯子の下は暗く、どこまでも落ちていく錯覚がして、後ずさりした彼女は洞の奥へと戻り横になった。
最近のフリンはここから足が遠のきがちのようだ。
それはたしかこないだ来た時に、股から血が出たという話を彼にしてからだった。
『これ、初潮っていうんでしょう?』
彼から教わったことだった。