第1章 みにくいあひるの子 …池のほとりで♥️
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それからぱったりと木こりはその場所へ来なくなった。
雨の日も風の日もアヒルは木こりを待ち続け、家に戻れば家族にいじめられる日々だった。
ある時、ストレスマックスで円形脱毛症になった所を兄弟アヒルにからかわれ、つい、アヒルの子は口に出してしまった。
「あのさ。 いい加減にしないと、羽毛むしって食べちゃうよ」
「ヒッ!!?」
途端にブルブル震え出す兄弟たち。
しまった、と思うも遅かった。
彼らは口々に母親に告げ口し、当然母アヒルは怒り狂った。
「お前なんか拾わなきゃよかった!! ここから出て行けえ!」
「ご、ごめんね。 お母さん」
「今まで育てた恩も忘れやがってっ」
羽を広げガッガッと目一杯つついてくるのでアヒルの子は困り果てた。
が、ふとこうも考えた。
(そういえばおれ、育ててもらったっけ………?)
餌取りも巣の掃除も自分がしてきた事に気付いたアヒルの子が首を捻る。
………とにかく、母アヒルはもう自分を必要としてないらしい。 彼は理解して住みかを離れることにした。
(養子縁組も解かなきゃ。 市役所ってまだ空いてたかな)
がっかりして歩くアヒルは、住んでいた池を横目で見た。
そしてもう餌取りをしなくていいので、三食の時間を気にしなくていいことを思い付き、ぽんと手を打った。
「そうだ、真弥に会いに行こう!!」
律儀なアヒル………もとい、オオカミは大きな独り言と共に彼女の匂いを辿って走り始めた。
(これからは自分が必要なもののために生きていいんだ)
彼の足取りはいつしか軽くなっていた。