第1章 みにくいあひるの子 …池のほとりで♥️
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その頃。
森の中の一軒家にて。
「浩二!! いい加減に解きなさいよ。 姉弟で何のプレイよこれ!」
「うっせえな。 目え離したらお前またあの変態オオカミんとこ行こうとするだろーが!」
家の柱に上半身をくくりつけられた木こり。
姉弟はギャンギャン口喧嘩をしていた。
「今の状況じゃ、あんたの方が変態でしょうが!」
弟は煩わしそうに帽子を取ると、テーブルの上にある大きな錠前を手にして玄関に向かった。
「たく、あんな獣となんか。 俺らを案じて死んだ両親の事も考えろ! いいか、俺は仕事に行ってくるけどな。 それまで大人しくしてろよ!」
バタン! ガチャガチャ。
ご丁寧にしっかり外から鍵までかけられ、木こりは家のなかに取り残された。
「ううっ……シスコンめえ。 漏らしたらどーすんの。 大体、オオカミさんは人間バージョンもあるって言ってるのに、あの石頭ってば信じやしない」
木こりが悪態をつくが一人きりで虚しかった。
暴れてみるも縄は体に食い込んで解けそうにもない。
「ヤバい。 最近、仕事にも行けてないわ、私」
あの日オオカミとの会瀬から、彼女の弟は事あるごとに木こりを束縛した。
「オオカミさん、どうしてるかな? またいじめられてないかなあ。 エッチも中途半端だったみたいだし、嫌われちゃってたらどうしよう? あんな可愛くて良い子だもん、他の女の子に取られたり………ううん、そんな人じゃない。 でもでも」
長々と独り言を言い、それにも飽きた木こりはうとうとしてきた。
そして「ぐう」と寝息を立てて眠ってしまった。
基本的に木こりは呑気なのである。