第1章 みにくいあひるの子 …池のほとりで♥️
「………さっきからてめえ、人の身内に何してやがる」
声がして、パッと上を見ると大柄な若い男性が二人を見下ろしていた。
肩にくわを乗せた、精悍な顔立ちの青年である。
木こりと似てる、とアヒルが思った。
立ち上がったアヒルがぺこーんとお辞儀をした。
「ええと。 弟さんだよね。 はじめまして、戸籍がアヒルのオオカミです」
人にもなれます、と。 アヒルが言おうとする前に彼の目がキッとつり上がる。
「意味がわかんねえな。 食うつもりだったのか? とっとと真弥から離れやがれ!」
「えっ!? それは誤解で。 おれは魚と野菜が好きだし、お姉さんとお付き合いをしようと」
「なおさら悪いわ、この変態オオカミが!!」
彼のもの凄い剣幕にアヒルが驚いた。
「ええっ? でも、真弥もちゃんと受け入れてくれて」
「うるせえ!! いいか、金輪際真弥には近付くな。 分かったか、変質者め!」
「………」
そして木こりの弟は彼女を抱き上げ、足音も荒くその場を去っていった。