第8章 ラプンツェル…少女の物語♥♥
意識を失ってしまったマドカはそれから熱を出し、数日間寝込んだ。
目覚めた時の彼女は普段通りで、姿は完全な大人の女性に変化していた。
弱音を吐いたことなど忘れたのだろうか。 たまに聞こえる、外からの侮蔑の声や投げ込まれる石を、彼女は一切無視するようになった。
父親に関して悪口しか言わなくなり、男が出入りする頻度も増えた。
………周りからどう言われようがそれでも彼女の元を訪ねる男は途切れない。
それ程マドカは美しかった。
ただ雨風の夜を怖がるようになり、外の世界に戻ることへの関心が消えた。
マドカの髪を撫でながら、あの時のマドカの気持ちを思い起こすとフリンの胸が痛んだ。
フリンは思うのだ。
(マドカちゃんがこのまま大人になるなんてあってはならない)
自分だけは彼女を子供扱いしようと決めた。
彼女の長く真っ黒なまつ毛、朱で描いたような唇。
そんなものを絵画でも観るような目で眺めつつフリンもまどろむ。
『よいか、五年以内にだ。 もしもそれが出来なかった場合は、お前を殺す刺客を送る』
地熱が高く夜は凍てつくように寒い。
こんな地で育つ植物が果たしてあるのだろうか。 と当時のフリンは正直思った。
『万が一戻れば僕は………兄さんや弟たちは?』
『ははは。 心配するな。 他の兄弟にも難題を出しておいた。 戻ってきた者を私の後継ぎとしよう』
『戻るのは一人だけとは限らないでしょう』
『………憎み合い、奪い取れば良いだろう。 荒れた地で生き抜くために、我らの祖先もそうやって生きてきたのだから』
冷酷な笑みを浮かべて父王は言ってのけた。