第8章 ラプンツェル…少女の物語♥♥
だが洞穴から姿を現したマドカを見て、互いの顔を見合わせた子供たち、それから彼らを見守っていた大人は彼女を一斉に攻撃したのだ。
『うわあ!! バイタが来たぞ!』
『やっつけろ!!』
『あんな汚い女を相手にするんじゃないよ』
『来る者拒まず手を出すって本当かい。 男好きのする顔をしてるね』
マドカは意味がわからない。 そんな顔をしていた。
投げられた石つぶてが彼女の肩や頭にあたり、慌てて木を登ったフリンは彼女を庇った。
『おいやめろ!! こんな子供を…』
彼が言い淀む。 腕の中のこれを子供という方が無理がある。
『ほうら、やっぱりだ!!』
やんやとはやし立てる罵倒から遠ざけようとフリンはマドカを洞の奥へと運んだ。
『………大丈夫かい? マドカちゃん』
『………』
体のところどころから血を滲ませたマドカは真っ青な顔をして震えていた。
『わ、私は………き、たない…の?』
フリンは何も言えずに彼女を抱きしめることしか出来なかった。
自分が彼女に近付いたのは単なる親切心からではない────彼にはマドカに対する負い目があった。
『………って、みんな綺麗だって…言って…くれる。 お、父さん…も……可愛いっ…て、なのに………私を、捨て…ねえ、違うの? 本当はき…汚い……あっ』
ごく衝動的にフリンがマドカに口付けた。
怯えて震え続ける彼女が話せないように。
これ以上自分を追い詰めないように。
長い長い沈黙のあと。
強ばっていた彼女の唇や体から力が抜けたのを感じた。