第8章 ラプンツェル…少女の物語♥♥
サア────────……
霧雨に近い雨の音が耳に届く。
すうと寝息を立て始めたマドカに、小声でフリンが話しかけた。
「………雨が小降りになってきた」
毛布代わりの上衣を彼女の肩に引き上げ、すると彼女のあらわな腿が覗いたので、彼は急ぎ気味にそこから目を外した。
この洞の中の粗末な調度品。
それから彼女に届けられる食料などはフリンが持ち込むこともあるが、他の男からの贈り物だ。
始めて興味本位でここに足を踏み入れた男が、彼女に『そうした』のは無理もない。
頭では薄らと気付いていたが最初の頃、フリンは何となくマドカに聞き出せずにいた。
こんな時、いつも意識的に彼は思い出すようにした。
何年か前、ある雨の夕暮れの出来事だ。
フリンはここを訪ねようとしていた。
マドカが珍しく洞の出入り口に佇んでいるのを見かけた。
『つーかまえた!!』
『じゃあ、次はオレが鬼!』
木の下ではしゃぐ、そんな子供たちの声につられたのかもしれない。
その頃の彼女の見た目はもう大人になりかけていたが中身はまだ幼かった。
『な、なにをしてるの?』
言葉につまりながらも笑顔で彼らに呼びかけたマドカは少女の表情をしていた。