第8章 ラプンツェル…少女の物語♥♥
作り話ならばラプンツェルのことを言われても嫌な気分にはならなかった。
「ところがそう上手くはいかないんだな。 あの家から離れると、株を分けたラプンツェルは枯れてしまう。 最初はがっかりしたんだけど。 でもね、鍵はどうやら他にもあるらしい」
生命力の強いラプンツェルは小さく分けた株でも、庭に植え直せばまた蘇ったはずだ。 そんなことを思い出したマドカが「フウン」と相槌をうつ。
「試しにこの木の下に鉢植えを置いてみたけど、ラプンツェルは枯れてないんだ」
フリンが少し外に目をやり、それからマドカをじっと見た。
「きみのお父さんも『そう』だったのかな。 枯れないラプンツェルの鍵はマドカちゃん、きみだね」
「………?」
(これは作り話?)
彼がふざけている様子はない。 マドカは急に分からなくなった。
「もしも僕とラプンツェルと一緒にきみも国に帰ったら」
「無理だね。 私はここから出ないから」
はっきりとマドカが言った。
どこへ行くというよりも、ここ以外の場所を彼女はいつも否定した。
しばらくの沈黙ののち、フリンがその場で大きなあくびをする。
「………そうだったねえ。 ふああ…僕も少し眠くなっちゃったな」
「水源の意味を教えてよ。 あと、『体よく』と、『欺く』。 それから、荒野の話をして。 どんな生き物が住んでる? 前にフリンたちが、山賊を倒したっていう作り話をしたけど、それは荒野の生物?」
彼女の隣に横になったフリンが床の敷物の上に頬杖をついた。
穏やかな目でマドカを見下ろし、大人びた少女に苦笑いを返す。
「そんなに一気に聞かれると………じゃ、一つ一つね」
マドカの外見は大人なのだが、それでも同年代の子供と較べて彼女は格段に賢かった。
ここに来てから彼女の周りには大人しかいなかったし、加えると、フリンが色々なことをマドカに教えてきたからという理由が大きい。
マドカは元々、利発で好奇心が旺盛な性格であった。