第8章 ラプンツェル…少女の物語♥♥
少しだけ眠気を感じ、マドカが彼の前にある寝床に体を横たえた。
「何だったっけ。 こないだはフリンは確か、六番目の王子様で………そしたら、その国の話?」
「そうだよ。 食べ物はおろか水源もままならない。 そんな中で、王族といえど何人もの王子が生きていくのは難しいことでね」
フリンはマドカによく空想の話を語ってきかせた。
家の大きさもあるトカゲと戦ったとか。
水に棲む、下半身が尾ビレの人間の歌を聴いたとか。
今回のフリンは王子様らしい。
「国内でたまにある、危険な争いや厄介事を治めに体よく王子を差し向けるのさ。 つまり口減らしってわけ」
(水源………? 体よく?)
彼の話は楽しかったが難しい言葉が多く、途中途中でマドカが分からないものもあった。
「口減らしっ…て?」
「表立って手出しはされないけどね。 成人したばかりの僕はある日、父王に呼ばれた。 そして、椅子にふんぞり返った王が言ったんだよ」
言葉を切った彼が胸を反らし、上からマドカを偉そうに見下ろして王様の真似をするのでマドカが笑った。
「『荒野でも枯れない奇跡の食物を持ち帰れ。 よいか、五年以内にだ。 もしも出来なかった場合は─────』」
フリンが怯えた表情をしながら水平にした手を首にあて、横に引く仕草をした。
その意味を理解したマドカが眉をひそめる。
「………フリンのお父さんってイヤな人なんだね」
「だよねえ。 まあね、そして旅をしていくうちにさ。 僕はきみの家に生えてるラプンツェルを見付けた。 役人とは他人を欺く仮の姿ってわけ。 どう、僕ってカッコよくない?」
「はあ…別に。 じゃあ、あれを持ち帰れば、フリンはお父さんに褒めてもらえるってこと?」
どこまでかはさっぱり分からないにしろ、今回はところどころ現実の話を交ぜてるのかな。 とマドカは思った。