第8章 ラプンツェル…少女の物語♥♥
そう口にしたマドカの無垢な瞳と出会い、しばらくして、彼が元のように明るい笑みを浮かべる。
「………さあ?」
「………」
訳が分からない、とマドカは呆れた。
とはいうものの。
フリンの掴みどころがない性格は昔からであることを彼女は知っている。
(いつもいい加減なことばかり言うし………)
ザアッ───────…
外から、強い風にあおられた雨粒が一斉に落ちる音がした。
「……っ」
思わず洞の外を見たマドカから少し離れてフリンが座った。
暗くなりつつ森の夜。
マドカは今のように、濃い赤紫の空に包まれた暗い夜が苦手だった。
「大丈夫だよ」
「え?」
「やむまで一緒にいてあげるから」
「………頼んでないよ」
同じく外を眺めながらフリンが言う。
「ふ…むしろ雨やどりさせてよ。 ビショ濡れなるのはいやだから」
そしてこんな時に決まってふらっと現れる彼と過ごすのがマドカの常だった。
なんということもなく彼が切り出した。
「まあ……さっきの話の続きだけど。 冗談はさておいてさ。 こんなことをしてたらお父さんが悲しむよ」
「ハッ…なぜ? それに、アイツはもういない。 悲しんでいるのなら罰だろう。 四年前、こんな所に私をおいて逃げたんだから」
「それは危険からきみを守るためだったと説明したよ。 ………奇妙な話だけど」
フリンの視線を避けるようにプイッと顔を横に向けたマドカが、ようやくとその顔に幼さを覗かせた。