第7章 ラプンツェル…妖精の物語♥️
美和は物陰からじっと夫婦の様子を見守っていた。
(夫の方。 間違いなくあれは若夫婦の子孫)
「また戻ってきてくれたのデスね」
美和が嬉しそうに呟いた。
「────美和」
どこか聞き覚えのある懐かしい声だった。
「リュート!?」
家から離れた墓石の傍に、リュートが佇んでいた。
彼のふんわりとした雰囲気は以前のままで、ただその輪郭線は頼りなく、今にも透けそうに見えた。
「ナゼ、どうしてここに………」
彼に走り寄った美和の目には、今にもこぼれ落ちそうに涙が溜まって潤んでいた。
「きみの願いは叶ったんだろう? 戻っておいでよ」
「リュート………ワタシは…間に、合わっ…ゴメ…なさ」
美和が大急ぎで彼らの所に戻った時はもう遅かった。
そこら中が焼け野原となった大きな木の下で。
美和はその場に座り込み大声をあげて泣いた。
途切れてしまったリュートとの約束。
『ミンナとここで、ずっと仲良く────』
守れなかった仲間との約束。
彼女はこの森で最後の妖精になったのだった。