第2章 2
しほは苗字の唐突な質問に小首を傾げる。てっきり自分に用事があるものだと思ったからだ。
「ちっ。越前リョーマは?」
手塚がすぐに会えないと察すると舌打ちを落としターゲットを変える。
「えっ、と。越前くんは……」
そこまで聞いて苗字の用事が何かを把握するしほ。
「ねぇ!しほちゃん!あたし見てなかったけど、越前ありえなくない?!あんな奴庇わないでよ」
物凄い剣幕の苗字にたじろぎながら、それでなんで最初に手塚を呼んだのだろう?と不思議に思うしほだった。
「あ、ごめん!庇うとかじゃなくて、ほら、越前くん自由人だから…ほんとに知らなくて」
両の手を振り、苗字に向けた。
そんな所でタイミングがいいのか悪いのか
ガチャリと入り口の扉が開く。
「苗字?何をしている。ここはうちの学校の控え室だが?またしほを連れ出しに来たのか?」
手塚だ。よりにもよって大きく誤解され、むしろ手塚の方が苗字に怒り気味であった。
「あーん?!そんなんじゃねーよ!あんたねぇ、何考えてんの?!越前どーにかしろ!越前リョーマ!!」
「あ、あだ名、やめ……」
手塚の前にしほが割り込むと、その肩を手塚がよけてはしほを自分の後ろに隠す。
「だーかーらー!!しほちゃんじゃねーっつの!越前だよ!アイツぶっ殺す!!」
自分よりも随分と背丈のある男に喰って掛かろうと精一杯ふんぞり返る苗字。
「あぁ。越前…か。すまない。」
「すまないじゃないってば!呼べ!」
手塚とて越前がやらかした事は承知していた。だから苗字の憤怒はある程度受け止めるしかないとは思ったが。
「俺にはどうしようもなかった。校庭200周でいいだろう」
「いい訳ないでしょ!だいたい部長の手塚が部員を管理もできないの?!ふざけんな!」
「…それは跡部も同じではないか。俺はいつもお前を止めるように言っているのだが?」
「……それとこれとは別なのー!!!!!」
一瞬苗字は返す言葉を失い、究極のいい訳を放つ。
そうこうしてる間にその様子を大石たちが覗いていたのを知らずに。