第2章 2
「ゲームアンドマッチ!青学、越前リョーマ!7-6!青春学園準決勝進出!」
審判の声とその後に反対側のオーディエンスの歓喜の声が ぼーっとした頭に遠く聞こえる。
その場にぺたんと座りこんで、力が抜けるってこーゆうことか。なんて俯瞰で思ったりした。
「苗字さん大丈夫?」
「あ、うん。」
気付けば近くにいたクラスメイトに声をかけられ 少しだけ我にかえる。
「あの、跡部さんの所へ行かなくてもいいの?」
「え、うん、そーだね」
「…さっきの見てました?」
「さっきの??」
どうやらあたしは自分で思っていたよりも長く、ぼーっと突っ伏していたらしい。言われてみれば氷帝のオーディエンスも半分くらい減っていた。
「え?…あとべが?」
「えぇ。試合の時に約束されてて。聞いてなかったの?」
「あ、あ、あとべが、ぼ、坊主?!?!」
んー。なんか興奮してて跡部たちが試合中に何か話してたけど、全然耳に入ってなかったや。
負けたら坊主?まじか。まじなのか。涙引っ込んだぞコノヤロー。
「とっ、、止めなきゃ!!!」
駆け出そうとしたらまたクラスメイトに呼び止められる。
「苗字さん!だから、もうバリカンで、こう、先程……」
「!?!?!」
なんてこと!
えーちーぜーんーーーーっ!!
絶対このあと闇討ち!殴ったる!
気絶した跡部になにしてくれんの?!
あたしの跡部にっ!あたしの彼氏ってわかってんだろーなあのクソガキっっ!絶対許さない!
てゆーか!手塚なにやってんだ!後輩の管理もできないのか!手塚め。
そーだ、手塚が悪い!!そもそも手塚がS1じゃない事がおかしいじゃん。それにあのクソガキの行動をなんで止めないの?!
意識のない人間の髪を無断で剃り上げていいってんのか?!手塚ァァァ!!!!
いくら可愛いしほちゃんがいるからって調子に乗んなよ?しほちゃんがやめてって言っても絶対許さないんだからっ。
「手塚ァァァァ!!!!」
バーンとわざと乱暴にドアを開け
部屋の中を一周睨みつける。
跡部の所へ行こうかと思ったけど、興奮おさまらなかった。越前と手塚への念が溜まりすぎて。
「あ!あだ名!今日は来てたんだ!」
「やゃ?しほちゃん、手塚は?!」
「え?今着替えてるけど…どうしたの?」