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世界で1番熱い夏

第2章 2






「あとべーーーーー!!!」


ドサッとコート上の2人が倒れる。
ベンチからは皆が跡部に声をかけていた様子が伺え、ふと得点を見ると117-117と数字が並ぶ。

ひゃ、ひゃく…じゅう?!?!
夢中になりすぎて数を意識していなかった。

ほんとに、もうやめて。
無理だよね?
大きく息を吸い込んで、跡部に向けて言葉を放つ。


「あとべーーーー!!立てーーー!!!!」


今日1番の大声で叫んでた。
涙が声と一緒に弾け飛ぶ。

もうやめてしまえ!そう思うのに
これ以上見てられないなんて思ったのに。
口に出た言葉は真逆のものだった。


ぎゅっと目を瞑って叫び終わり、手摺から今にも落ちそうなくらい前のめりの体勢で 目を開くと
跡部の身体がゆっくりと動いた。


「勝つのは……氷帝だ!」


跡部がむくりと起き上がり、突っ伏していた事が幻なんではないかと思う声で話す。


「跡部……あとべ!!」

いつも見ている凛々しい跡部の立ち姿。
夕陽でまた妖艶に輝いてる。
その姿を目にするだけでまた、目頭が熱くって。
どうしようもないくらいに愛しい。

やっぱり跡部はどんな場面でも跡部で、皆の羨望を期待を裏切らない。

例え ここで負けても
この男は全く負けてなんていない。
だって、こんなにもみんな魅せられてるんだから。

ねぇ、越前、あんたはこんな風になれる?
きっと無理だよ。まぁなる必要もないんだろうけど。

跡部はね、ただの猿山の大将なんかじゃないんだから。(あえて言うなら 美しい猿山の、美しい大将なんだからっ)





バシュっ

最後のボールが 夕闇に霞む跡部の背後に弾んで転がった。



「118-117!越前リード!」

「……?!?!」



皆の視線が跡部に集中する。
なのに 微動だにしない跡部。



あ…。

びっくりするほど自然にぼたぼたと目から身体中の水分が出てるんじゃないかと思うほど流れ落ちる。零れるなんてもんじゃない。

立ったまま、ぴくりとも動かないそのシルエットは 今まで見たなによりも美しかった。


「あとべぇ……ぅぐ」

暫くその姿を潤んだ視界に焼き付けて、両の拳で乱暴にたれ流れる涙を拭った。
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