第2章 2
小さくなる跡部の背中。
だけど本当になによりも頼もしい。
かっこいいの全てが詰まってるの。跡部には。
全てを期待せずにはいられない。
跡部のきもち?背負わされる方の身にもなれって?そんなことあたしが考える事じゃない。
跡部にとってきっと、皆の期待は誇りだよ。
あたしが こんな風に彼を崇拝すること、きっと跡部も求めてくれていると感じるのだから。
格子の扉越しにコートを見る。
ここからじゃやっぱり狭いな。見渡せない。
観覧席に戻るべくまた階段を登った。
また、タイブレーク……?!
越前と跡部は死闘の末、さらなる厳しいステージに立っていた。
「「「氷帝!氷帝!氷帝!」」」
歓声に飲み込まれまいと、これまで以上に声を張り上げる。負けない、負けない!跡部は負けない!
そう思いながら。
激しくボールを打ち合う音が もうどれくらい時間が経ったのか分からない程の間響き続けていた。
日が傾きかけて、西からの日差しが朱色に周りを染める。
……これ、いつ終わるの?
激しいタイブレーク、追いつかれ追い越され共にあとワンゲームがとれないでいた。持久力で右に出る者はいないと思われていたあの跡部が、跡部の肩が大きくあがっている。もちろん向こうだってボロボロだ。
見ていられない……。
思わず目を塞ぎたくなるけれど
この真剣な汗と熱気にあてられては
勝敗の行く末をこの目で見届けずにはいられなくなる。泥と汗と夕陽の赤が異常な生命力に満ちていてむせ返りそうだ。見ているだけでも気が遠くなる。
もう、いい。
そんな言葉が脳裏を掠める。
そんな訳ないのに。跡部本人がまだまだ立ち向かっているというのに。
だって、もし跡部がここで敗れてしまえば 彼らの最後の夏はここまでになってしまう。
別にテニスが出来なくなる訳じゃないけれど。
でも、来年も同じメンツでこうしていられるのかわからないし。それに彼らの3年間が敗れるのかと思うと。そもそも延長戦なんだけど…だからこそ我が氷帝陣はどこの学校よりも熱い思いを賭けているはず!
目の奥が熱くなってそれから、じわじわと込み上げてくる。予感している訳じゃない。最後まで跡部しか勝たないって思ってる。けど必死にボールを追う2人の姿を見ると それは止まらなかった。