• テキストサイズ

世界で1番熱い夏

第2章 2



突然響く誰かの叫び。

危ない??
え!?!?!?


ガッシャーンと耳を突き抜ける音が
歓声を静まり返らせる。

しょ、照明が?落ちた?!

「まぢか……」
なんで?そんな事ってある??

そしてその隙間を縫って越前のボールが
跡部の隙をついた。

……なんて奴。


てゆーか危ないじゃない!なにこのテニスコート!ありえない!跡部が怪我したらどうするの!
破片が飛び散っている。

2人はベンチへ戻りコートの整備を待つようだ。
それを知り、慌てて階段を駆け下りた。



「あとべ!!」

ガシャン、格子の扉に手をかける。その先には選手たちが控えるベンチがすぐ傍にあった。気付いてもらいたくてガシャンガシャン音をたてる。

鳳「あ、苗字さん!」

「鳳!ね、跡部は?呼んでもらってもい?」

1番近くにいたと思われる鳳が気付いてくれた。ほっとして跡部を待つ。

なんでだろ、会ったからって何ができる訳でもないのに。跡部、大丈夫かな?あの電球の破片とか跡部に傷つけてないかな?



「…なにしに来やがった」

「……顔、見せて?」


柵越しに近寄りそっと手を延ばした。ぴとっと跡部の頬にあてがうと、跡部は先程の鋭い目線を少しだけ緩めたように思う。

「よかった。まだ余裕がありそう」

本当の所はわからない。本人にしか。
だけどそう思ってないといけない気がした。


「あぁ、そんなことか。」

「そんな事でもなんでもいいけど、跡部を近くで見たかった。」

「苗字…ちょっと。」


頬に這わしたあたしの手をギュッと握ったかと思うと、一気にその瞳を近付けて来た跡部。

格子があるのが憎らしい。

両手を絡めて、冷たい柵の隙間を縫って
跡部の唇が軽くあたしに触れる。


「心配するな。」

「うん。してない」

「嘘つけ」

「嘘じゃないよ、コーフンしてるの」

「…あぁ。そりゃよかったぜ。」

「まだずっと見ていたい」

「見てろ、俺の勝利を。」


うん、と頷く前に跡部はあたしの頭をぽんぽんとして 握った片方の手に口づけた。


跡部部長!とコートの方から誰かが跡部を呼ぶ。どうやら試合再開の準備が整ったようだ。

そっとゆっくり離れる唇が、手の甲が少し寂しく感じる。


「行ってくるぜ」

ガシャンと音を立て、格子を握って見送った。

「待ってるね!」と。
/ 11ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp