第1章 1
「あとべーーーーー!!!!」
ベンチに向けて叫んだ。
「よぉ、苗字。てめーなに泣きそうな面してやがる?」
あたしの声にすぐ反応を示した跡部。
え、そんな顔してる?あたし。わからない。
「泣いてない!そんな事より!越前ボコボコにやっちゃってーー!!」
跡部に向けて自分なりの精一杯のエールだ。
岳「ボコボコってw」
忍「ケンカとちゃうで?笑」
芥「あーなんとか中止になって俺の試合になんねーかなw」
下では岳人たちが何か喋ってるけど
跡部だけを見て返事を待った。
グッと拳を握り、その手を高くこちらに挙げた跡部は とてもキラキラして見えた。この我が校のカリスマを信じない人なんているだろうか?
「あぁ。苗字は黙って見てやがれ。あの生意気な口、塞いできてやるよ」
そう一言こちらを見て残し、
ニヤリと笑いながらくるりと踵を返すと
コートへと静かに歩みを進める。
ドカンとまた声援があがるが、それは今までの物よりも大きく 地面まで揺れている気がした。
うん、これよ。これだよ
あたしの跡部はいつもこの羨望と憧れの視線に包まれている。そしてまた魅せられる。
…なのに
あんのチビぃーー!!!
くそガキぃぃぃ!!!!!!
「勝つのは…俺だけどね」と指を鳴らし
跡部のパフォーマンスを遮る越前を見て苛立ちが隠せずにいた。一人で野次を思い切り飛ばす。競輪、競馬場かのように。周りが引くほどに。
あぁ、もう無理っ。今すぐあそこに出て行って引っぱたきたい!テニス部に入ればよかった。。あ、女子じゃ意味ないじゃん。うわーーん!悔しいよぅ
そんな風にどうする事もできずにその場で地団駄を踏んでいたら コートからは2人の高笑いが聞こえて…
ん?なんかよくわかんないけど
まぁ 跡部が勝ってくれさえすればいいか。
越前ちびザルバカヤロウ。
あのチビ猿は跡部と互角に打ち合っていた。
…嘘でしょ。なんかすごくいい試合になってる。テニスのことよくわからないし、そんなにスポーツシップもないけど。それでもわかる。
はっ!魅入ってる場合じゃないじゃないか。
ここは万一負けてしまったら
跡部たちの最後の夏が終わっちゃう。
跡部、そんな余裕ぶってないで
お願い、もうぶっちぎりで終わらせてよ。
…難しいのかな?
「越前!!危ない!!」