第1章 1
その願いも届く訳なく、樺地は手塚に食らいつくも破れ、D1の試合が始まっていた。
宍戸…頼んだよ
この試合で決まってしまうかもしれない、
そんな思いが200人を超える氷帝テニス部と
あたしのように応援に来ているみんな
そしてベンチで構えるレギュラー陣を熱くさせた。
「「「氷帝!氷帝!」」」
観客席が声援の声だけで揺れる。
あたしも周りに負けじと声を張る。
喉がおかしくなるくらいに。
鳳のスカッドサーブが進化していく。
頼もしく皆の目に映るが、相手は青学のゴールデンペア。やはり巻き返しを喰らう。
跡部に、お願い、勝って跡部にどうか繋げて。
両手を合わせ握りしめた。
「7-6!青学!」
「7-7!氷帝!」
タイブレークだ。周りの大きな声援が遠くなり
自分の鼓動がうるさく鳴るのがわかる。
なんだか青学のゴールデンペアの様子がおかしい。シンクロ?それなんなの。もうお願い、これで決めてよ、宍戸っ!!!
「8-7!氷帝!」
次こそ!マッチポイント…決めて!!!!
そこにいる氷帝生みんなが願った。
ぽーんぽんぽん…
ボールはあっけなくコートに転がり
そこには誰もいなかった。
そしてバウンドの音が聞こえるくらい
会場は静まりかえる。何が起こったのか把握する為に。
え?
「てめぇーら!!何故打たなかったぁ!?」
宍戸の声で把握する。
悔しそうな悲痛な叫び。
勝っ…た?
動くのをやめたボールは青学のコート上だ。
「マッチポイント!ゲーム氷帝!」
審判の声と共にドッとまた歓声が沸いた。
どうやら相手が打ち返す事をあえてやめたようだ。
だが、勝ちは勝ち。と素直に喜ぶ歓声の主たち。
…なにそれ、そんなのってないよ。
やっぱりあの連中はふざけてる。
負けるならっ もっと泥臭く負けなさいよ!
あんたたちが打ち返してたって
宍戸たちは負けないんだから。
心で悪態をつきながら どんな形にせよ
跡部の試合に繋がった事に安堵する。