第1章 1
岳人と日吉が自分の試合を終えてベンチに戻る。
タオルを頭に被り表情は伺えない。
あたしはその真上の観客席で手摺を
力いっぱい握りしめていたままだった。
なんでよ、勝ちに行ったんじゃないの?
岳人、日吉。あんな奴らにっ。
嫌だよ。許せない、青学なんて大嫌い。
あたしの大事な親友に なんて顔させるの。
そりゃ真剣勝負なんでしょーけども。しるか!
タオルの下は想像に容易い。
だけど、しばらくしてするりと外されたその下の表情は、キッと次の試合を強い目線で捕らえていた。
あ…そうか。まだ全部終わった訳じゃなかった
うん、みんなの力を信じてる。そんな顔だ。
そう思っていたら 次の青学のオーダーにたじろいだ。握りしめた手が汗でヒヤリと滲む。
…手塚?え、、手塚?!
ふざけてる。青学ふざけてるとしか言いようがない。S2で手塚を出すなんて。じゃあ、
じゃあ跡部はどうなるの?
あんなに手塚を意識してきた跡部は。
すぐ下の跡部を覗き見る。
口元は笑ってるように見えるが、その瞳は
どこか影がさしているようだった。
そうだよね、ない、とは思いたいけど
これで最後かも知れないのに
手塚の相手は跡部じゃなかった…。
それだけでも悔しいのに。
て事はS1まで回ることになったら 跡部の相手は
まさかあのクソ生意気なガキ…?
いや、不二くんまだだよね?どちらにせよ
お願いだよ神様、今すぐ手塚と戦わせてあげてよ。