第5章 胎動
「ガキが大人に気使ってんじゃねぇよ…。」
『違います!私はリヴァイさんの力に…』
そう言いながらマリーが顔をあげると、リヴァイの寂しそうな、苦しそうな顔が見えた。
『リヴァイさん…。』
「俺は確かにアルマが好きだった。初めてお前と会った時は驚いた。あいつと同じ目で俺を見て、同じ顔で笑いやがるからな。だか…。」
リヴァイの腕に力が入る。
「俺はお前を嫌いだなんて思ったことは一度もない。大好きな女が残したガキだぞ。嫌いな訳ねぇだろ。」
『リヴァイ…さん。』
マリーの目から涙が流れる。
「てめえはほんとよく泣くな…。…あいつは俺の前では涙を見せようとしなかった。俺じゃなくてフリッツを選んだ…最後までな。」
『最後?』
「あいつらが死んだ時だ。てめえは覚えてねぇだろうが…あの時俺はあそこにいた。間に合わなかったが…。ガキ1人しか助けられなかった。だが、今はよかったと思っている。」
リヴァイが泣いているマリーにおでこをくっつける。
「お前を助けれてよかった。
…お前が生きていてくれてよかった。」
『はいっ!』
マリーは心から笑えた気がしていた。
両親が亡くなって全てが絶望で埋まっていた時、助けてくれたのはリヴァイだった。
そして兵団に来て、噂を消してくれたのもリヴァイ。
リヴァイはいつも自分を助けてくれていた。マリーは胸がいっぱいになっていた。