第1章 終わりと始まり
「嫌…。嘘よ。ほら、フリッツ。
ねぇ早く逃げましょ?」
父の頬をなで、笑いかける母の姿
はもう見てはいられなかった。
『お母さん‼あたしがおんぶするから!早く逃げよう!』
「うるさいっ‼」
母の肩を掴んだ手をはたかれた。
「もうダメなのよ…。お母さん充分頑張ったもの。ごめんねマリー。母さんは動けないから、お父さんの所に行かせて?フリッツは私を唯一必要としてくれたの。」
『…え?』
再び降りて来た大きな手に掴まれ、空へと浮かぶ母の姿。
その表情はとても幸せそうで、
暗闇の中へと消えていった。