第2章 選択
「で。マリーはエルヴィンから逃げてきた。そういうことだね?」
物に溢れたまるで秘密基地のような部屋。きっとこの人の心の中も同じ様に好奇心で溢れているのだろう。
この人と話していると、話すつもりの無かったことまで口に出してしまう。
そう。まるでこの温かさは…。
「あたしは君に兵士になって欲しくはないかなぁ。」
『今までを捨てるのは嫌だ。』
「エルヴィンは言い方がキツかっただけさ。マリーを思っての言葉だよ。」
「あたし達は危険な壁外に出て行くおかしな奴等だからね。やっぱり死ぬ者は少なくないし、仲間の遺族から恨まれることもある。
そんな中団長は自分の姪を安全な場所に置いて守っているなんて、許してはくれないだろうからね。」
でも…。
「どこの兵団を選んでも、兵士はそれなりの思いが必要ってことだよ。
どちらを選んでも今までの君を捨てることはない。新しい君を作ればいいのさ。」
扉を閉めるとため息が出る。
私は何を選んで何を捨てればいいのか。