• テキストサイズ

【ONE PIECE】海賊王と天竜人の娘は誰も愛せない

第1章 




目が眩むような世界のまぶしさに目を細めながら、賑やかな街を歩く。
誰もわたしを気にしない。天竜人の服装で歩けば誰もが地に膝をついていたのに、誰ひとり、わたしを世界貴族の人間として見ない。
なんて素敵な世界。こんなに開放感を味わえるとは思っていなかった。

こんな自由を知ってしまったら…本当に、もう二度とマリージョアへなんて戻れない。
戻りたくない。



一般市民と同じ服を身につけ、数日が経った頃。わたしはシャボンディ諸島を出て、小さな島に移動していた。もし追っ手が来て、見つかってはいけないと思っての行動。見つかってしまったらきっと、連れ戻されてしまうから。
定住することなく、宿を借りての生活。しばらく暮らせる分のお金はあるから不自由はないけれど、ずっとこのままというわけにもいかず、わたしは宿のそばにある酒場でアルバイトというものを始めてみた。優しい店主は、まったく経験のないわたしに丁寧にひとつひとつ、するべきこと、大切なことを教えてくれた。
小さな島と言ってもそれなりに栄えており、毎日が賑やかで海賊も多く訪れる。ちょっとした観光客だって見かけることもある。毎日が忙しい。でもそれがなんだか、心地よい。

楽しそうに酒を飲み、大笑いし、友人や仲間と肩を叩き合い、時には喧嘩沙汰になったり、酒場が人生相談所のようになったり。
天竜人として外を歩いていた頃では、絶対に見られなかった景色。
眺めているだけで、音を聞いているだけで楽しい。

酒場で働きはじめて、二週間。
はじめは何も上手くいかなかった仕事にも少しずつ慣れてきた頃。
わたしは、出会ってしまった。

最初で、最後の。
眩しくて苦しい、けれど心地よい。
恋というものに。



太陽のような笑顔と、軽快な笑い声。
時おり見せる、精悍な表情。
仲間や、わたしや店主を気遣う優しさ。
籠の中で生活していたわたしには楽しくてたまらない、世界中の冒険のお話。

『お名前を伺っても、いいですか』
『おれか?』

カウンター越しに問いかければ、お酒が入ったグラスの氷をカランと鳴らす、とある海賊団の船長さん。まっすぐにわたしを見つめながら口角を上げた彼の、口元の髭が動いた。それが何だかとても可愛く思えて、名を口にした彼にわたしも笑みをこぼした。

/ 20ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp