【ONE PIECE】海賊王と天竜人の娘は誰も愛せない
第2章 *
ナンパ男の背後から、新しいお客さんの足音が響いてくる。一人ではない、数人いる。団体…海賊か?
坊主と呼ばれて顔を歪めたナンパ男は、私の「いらっしゃいませ」の言葉と同時に勢いよく振り返った。
「あ゙ぁ?何だいきなり、邪魔すンじゃねーよ!!……っ、え」
少しでも私にかっこいいところを、とでも思ったのだろう。微塵も心は揺らがないけれど。せっかく来てくれた新しいお客さんに、まるで低俗なヤンキー海賊のような絡み方をしたナンパ男は、振り返ってお客さんの顔を見た瞬間に硬直した。
「邪魔をしたつもりはないが、そう思わせたのなら謝る。なに、少しアドバイスをしようと声をかけただけだ。…あまりにも不憫でな、あんたが」
にやりと口角を上げてナンパ男に詰め寄ったお客さん。途端に顔を青ざめさせたナンパ男と同様、お客さんの来店で何故か店内でくつろいでいた他のお客さんたちもガタガタと席を立ち上がり出した。
あの〜お支払いは忘れないでくださいね、と内心別の意味でハラハラしながらも、それほどまでに新しいお客さん…海賊の船長さんらしき赤い髪の男が恐ろしいのだろうか。
新聞とか手配書をあまり見ない習慣が今、仇となった。
「す、すみませんっごめんなさい帰りますッ!!!」
あッお支払い……と言う間もなく、ナンパ男はさっきまでの余裕ある勢いを無くして店を出ていってしまった。なんだか可哀想に思えてしまったから、店先でつまずいて派手に転んでしまったことは見なかったことにしてあげよう。