【ONE PIECE】海賊王と天竜人の娘は誰も愛せない
第2章 *
「わたしが死んでしまったら…あなたは、独りぼっちね…」
「……」
「ハァ……ごめんなさい…あなたという人間を愛せるのは、わたしだけなのに…っ」
母が長い時間をかけてゆっくりと語った話は、絵本の中のおとぎ話のようだった。
ゴールド・ロジャーという海賊王の血を半分、世界の創造主の末裔の血を半分持っている、私。
生まれることなど決してないと言えるような、海賊と天竜人の血が混じった人間。
きっと、真実を知れば誰もが恐れ、嫌い、血を途絶えさせるために私を追うだろう。
これが本当の、独りぼっち。
信頼を築けず、誰も愛せない。
「わたしは…わたしだけは、あなたを愛してる。…この言葉をどうか、忘れないで。つらい時に思い出してほしいの、わたしの、かわいい子…心から、愛してる」
ゴールド・ロジャーの処刑から、約一年。
病を患っていた母は寿命がきて、呆気なくこの世を去った。
私を独り、置いていってしまった。
栄えた街から外れた森の奥の小さな平屋に、十歳の私を残して。
「…じゃあ」
私は。
「……生まれてきちゃいけなかったんだ」
そういうことでしょ?
ねぇ、お母さん。
それから、会ったこともない私の父親…ゴールド・ロジャー。
嗚呼、本当の名前はゴール・D・ロジャーだっけ?
両親が二人とも死んでしまった今となっては、もう、どうでもいいことだけれど。
誰も愛せず、誰も愛してくれない世界に、私を独り残すなら。
産んでくれない方が、良かったのに。
なんてことをしてくれたの。