【ONE PIECE】海賊王と天竜人の娘は誰も愛せない
第1章
それから、およそ十年。
元気に育った娘と街へ出かけ、新聞を手にした日。
『……海賊、王…?』
たびたび新聞で見かけていたあの人の名前が、一面に大きく載っていた。元気そうな手配書の笑顔に、わたしは自然と顔を綻ばせた。
しかし新聞の記事を読んだ街の人たちはそれぞれ、歓喜、驚愕、恐怖に満ちた声をあげていて。
わたしは、娘を連れて思わずその場から逃げた。
海賊王。海賊の、王。頂点。
世界に嫌われている海賊の、王様。
そしてわたしは、世界の全種族に嫌われている、天竜人の血を継ぐ女。
───嗚呼、とんでもない。
もしかしたら…もしかしたらわたしとあの人の子である娘は、両親の正体が知られてしまった暁には殺されてしまうかもしれない。
海賊王の血を継いでいる娘は海軍に追われ、市民に嫌われる。
天竜人の血も継いでいる娘は、どうしようもなく世界に嫌われる。
誰にも、愛されない……血を継いでしまった、わたしとあの人の娘。
怯えて信頼も築けない。
身分がバレたらと思うと、誰も愛せない。
もし身分がバレてしまったら、誰も愛してくれない。
わたしを追放した天竜人はもちろん、一般市民、世界政府、海軍……娘を愛してくれる人は本当に、誰一人いなくなってしまった。
そんなの、…そんなこと…!
『…父親のことも、天竜人のことも知っている母親のわたししか、あなたを愛せない…そんな世界になってしまったのね…』