【ONE PIECE】海賊王と天竜人の娘は誰も愛せない
第1章
マリージョアへ戻る前にいた思い出の島とは、別の島に下りた。
また、一からのスタート。新しい人生。
少し大きい、栄えている島。街外れの森の奥、海が見える場所にわたしの希望で用意された、つつましやかな平屋建ての我が家。そして、お腹の子供を産むまで、子供が育ち目を離してもよい年齢になるまでの大金の生活費。
お腹の子と二人で、ここで生きていく。
天竜人だと知られてしまうと、またどんな目を向けられるかわからないから。静かに、誰にも何も言わず大人しく暮らさなければ。
送迎の船が出港する直前、船長さんが、わたしの母だった人から言伝を預かっていると言った。
何かしらと耳を傾けたけれど、わたしは……
── “お前が逃がした奴隷と、それに協力した海兵はすべて始末した”…。
船長さんが告げた言伝に膝から崩れ落ち、船が去った後もその場を動けず……日が暮れるまで、潮騒を聞きながら泣いていた。
わたしは、人殺しね。
こんなわたしが母親になるだなんて……誰が許してくれるのかしら。
元気な産声をあげて生まれてきてくれたのは、わたしにそっくりな女の子だった。
顔立ちも、瞳の色も、わたし。とっても小さな、小さな命。わたしの娘。
でも、髪の色はわたしと違った。黒だった。あの人と同じ、少し癖のある黒髪。
『ふふ…あの人の面影がある。わたしの瞳と、あの人の髪……似合ってるわ。生まれてきてくれてありがとう、わたしの可愛い子…』
一生をかけて愛そうと、決めた。
可愛い可愛い、わたしの、好いた人との間にできた愛しい娘。