第12章 芸能界 第4話
「やんねーよ」
『…』
(また黙ったな
黙る事が多くなったのは
やっぱり気のせいじゃない)
「…今ね、私がヒロイン
やってる作品あるんだけどまだ役者
決まってない役あるんだ
偉い人に掛け合ってみようかー??」
「やらん」
「えぇ!?」
「なんて作品??」
「「今日は甘口で」っていう
少女漫画が原作のドラマ」
「「今日あま」??」
「うん、知ってる??」
「いや演出カジってる人間で知らねーやつ
モグリだろ、ど名作じゃねーか」
「興味ある??」
「だから俺はもう演技は
やらないって言ってる…」
「掛け合ったら案外スルッと
決まっちゃうかもよ??」
『かなちゃん、アクアに久しぶりに
会えて嬉しいのは分かるけどあんまり
しつこいのも良くないと思うよ??
アクアだってやらないって言ってるし』
「… 」
(レン…??
珍しいな、ハッキリ意見するの)
「わ、私はただ提案をしてるだけよ??
それにPの鏑木さんには
可愛がられてるから私!!」
「鏑木??フルネームは鏑木勝也??」
「そうだけど??」
「…」
アイの残した携帯電話は3台ある
仕事用とプライベート用
これらの携帯にはメンバーや
事務所社員のログしか残っていなかった
アイは抜けているようで想像以上に
用心深く本気で俺達の秘密を守ろうと
していたのがスマホから分かった
問題はもう1台の携帯
これはアイが妊娠以前に
使っていたスマホだ
バッテリーはとっくの昔にダメに
なっていて何世代も前の型でまだ使える
バッテリーを探すのは骨が折れたが
パスコード突破の手間に比べたら
比較にならなかった
間違える度に30秒間操作出来なくなり
何桁のパスワードかも分からない
毎日時間を作って1つずつ
100通りを試すのに半日かかった
1000通り試すのに1ヶ月
毎日 毎日 毎日
45510通り目
このパスワードにたどり着くまで
4年の月日がかかった
そのスマホには10数名の芸能関係者の
メアドや電話番号が残っており
その中の1人が