第15章 聡明で腹黒い王子様

それでも、あの高慢ちきな元家族は驚愕しただろう。ただ、喚き立たなかったのはきっと・・・王太子が、私の事を考えているのだと知らされたから？

「あの・・・婚約者がいらっしゃったと思うのですが。」
「濡れ衣着せて、自分の配下へ輿入れさせる手筈らしいよ。まだ、それは行動していない様だけど時間の問題かな。」

次々と新情報を話してくれる。

「だから、私が彼女を貰おうと思って。」
「それ、本気か？」
「勿論、本気だよ。王太子教育も終えている才女だし、取引すれば他の選択肢は無いに等しいからこの国に来てくれると思うんだ。」

思わず震えた私の身体。王太子って怖い。

「それで、相談だけど。それに立ち会わないか？」

マーフィスは考え込んでから、承諾の意を唱えた。

「分かった。ディンバーの提案に乗る事にする。」
「あ、あの、マーフィス・・・。」
「そんな不安そうな顔をするな。書面も交わした公にも俺たちは夫婦だ。幾ら他国の王族が異を唱えても、アルケミアではそれは意味を為さないからな。」
「アルケミアは独立国家だからね。ウチとしては、マーフィスたちと懇意にしていることを知らしめたい。」

でも、一つだけ気になった。確かに、マーフィスとは婚姻の書類を交わした。でも、そもそも元婚約者との婚約はどうなっているのだろう？

「気掛かりがある顔をしてるね。元婚約者との婚約破棄の手続きのことかい？」
「そ、それは・・・。」
「きっと、ルーヴィン王太子が色々と画策していると思うけど、あの人を敵に回してタダで住むとは思えないから何も問題ないと思うよ。」
「あの人？」
「サーファスさんだ。」

そう言えば、出来る人だと聞いている。そして、私にマーフィスを見限らないで欲しいとも言われた。

「サーファスさんって、そんなに凄い人なんですね。」
「あの人を目の前にして竦まない人は、マーフィスくらいじゃないかな。私も一度だけ会ったことはあるけど、肝が冷えたからね。」

そんな人をマーフィスは、手放しに凄くていい人だと認識している。私も全然嫌じゃない。

「アルケミアの一番偉い理事長ですら、サーファス殿には強く出られないからね。」
「あぁ、確かに。俺が昔悪戯した時、理事長自ら俺に罰を与えようとしてサーファスさんにブチ切れられてたし。」

色々とツッコみどころ満載だけど、私はスルーしておいた。