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特級錬金術師の旦那様

第12章 激怒させた男爵家


ズードジアとの婚約が慰謝料付きで破棄になる様で、嬉しいのかもしれない。普段から、キラキラしい宝飾を身に着けているらしいから、余計に嬉しいのか?

そう思ってたんだけど・・・そうじゃなかった。何処にも思い込みの激しい人はいるのねなんて呑気に思っていた。

だって、司法機関から出た時に、待ち伏せしていたアシアナがいたからだ。マーフィス目掛けて走り寄って来ては、胸の前で両手を組んでウルウルした目で見上げている。

「やっぱり、私のこと好きだったのね?だから、婚約破棄になる様に頑張ってくれたんでしょう?」

あ、サーファスさん、マーフィス両人はポカンとした顔をしている。言われた意味を理解出来なかったのかも?

「マーフィス、錬金術師は一夫一妻制だと知っていますよね?愛人を持つことも認められていませんが、その事も知っていますよね?」
「サーファスさん、俺の嫁はミアだけです。結婚の届けも承諾されましたよ。」

マーフィスの手元には、急に現れた結婚承諾書。しっかりと、国の代表が認めた印が押されていた。何処までも、仕事が早いのね。

「ど、どうして・・・私の為に・・・。」
「元々、興味なんて鼻から無かったし、それにお前・・・アイツとは通じてただろ?」
「えっ、そ、それは・・・。」
「俺はミア以外の女は興味ないし、他の男の手垢が付いたヤツはそれ以前の問題だ。」

泣き崩れるアシアナだったけれど、マーフィスは何の興味も示さなかった。こんなに好きなのにと、連呼しているアシアナ。そんなアシアナにマーフィスは、溜め息を吐いてこう言った。

「自分は婚約しておいて、Cランクのヤツにもいい顔してたんだろ?俺が止めなかったら、お前今頃命無かったぞ?」
「えっ・・・。」

絶句するアシアナ。

「勘違いするなよ?俺はお前を庇ったんじゃなくて、お前みたいな女と関わって人生を終わらせるアイツの方を窘めたかっただけだからな。昔は・・・こんなヤツじゃなかったのに残念だ。じゃあな。」

私の手を引いて、アシアナから離れて行くマーフィス。

「アイツも、昔はこんなヤツじゃなかったんだよ。何処で、間違えたんだろうな。」

そう呟いたマーフィス。

「マーフィス・・・ひょっとして、アシアナさんのこと。」
「女として見たことはねぇよ。ただの・・・ちょっとした仲間意識みたいなもんだ。」
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