第12章 激怒させた男爵家
司法機関の建造物は、真っ白な建物だった。この機関で働く人たちや利用する人たちもいて、思ったより怖いとは思わなかった。そんな時、マーフィスの名を呼ぶ声が聞こえた。
「やっぱり、来てくれると思っていました。サーファスさん。」
「マーフィス、久しいですね。健勝な様で何よりです。それで、こちらがミアさんですね。初めまして、錬金術師の国【アルケミア】の理事長補佐をしておりますサーファスと申します。」
「ミアです。よろしくお願いします。」
「可憐な方ですね、マーフィス。貴方のお師匠様も喜ばれていましたよ。」
どうやら、錬金術師の横の繋がりは太いらしい。
「近い内に、顔を出す予定です。」
「それがいいでしょうね。」
「それで、どうなりましたか?」
「えぇ、滞りなく。」
それはそれは、綺麗な微笑みを見せてくれたサーファスさん。絶対に敵に回しちゃダメな典型的な人だと思えた。
「詳しい話しは後で。それより、こちらにサインを。」
サーファスさんが取り出したのは、一枚の申請書。そう言えば、今更ながらだけど書いてなかったよね?結婚報告書。そして、今世でも保証人が二人必要らしい。でも、その保証人の欄には当事者より先に記入されていた。
「そう言えば、こういうものがありましたね。」
「マーフィスの事だから、そんな事だろうと思っていましたよ。さ、早く記入してください。」
マーフィスが先に書き込み、私に次に記入する様に促した。もう気持ち的に半分は、マーフィスの嫁になってた。だから、私は何の躊躇することなく名前を書き込んだ。ただのミアとして。
書き込んでみれば、直ぐに用紙は鳥の姿になって飛んで行った。本当に仕事が早い。
「これで、今回の仕事は終わったも同じです。では、愚者の断罪と参りましょうか。」
一瞬、そう一瞬だけ、背筋が震えた。サーファスさんとマーフィスの笑顔を見て。
結果・・・ズードジア家御一行は、サーファスさんの話術とマーフィスが準備していた映写機で事情を法廷で説明。丸腰の相手には、どう太刀打ち出来るものではなかった。
慰謝料的な話しも出たものの、私は関わり合いになりたくないので辞退した。最後まで、マーフィスに助けを求め焦がれる様に何度も名を呼ぶ令嬢。傍聴席には、冒険ギルドの受付嬢が嬉々としてマーフィスを見ていた。