第12章 激怒させた男爵家
今から数年前。
二人が出会ったのは、未だ未熟だった頃。でも、自分の未来の為に頑張っていた。アシアナも、ギルドに入って我武者羅に目を輝かせて未来を見据えていた。
だから、仲間意識。そんなアシアナを見て、マーフィスも頑張ろうと思っていたのかもしれない。
「では、マーフィス。ミア。私はこれで。」
「ありがとうございました、サーファスさん。近い内に、そっちにも顔を出します。」
「えぇ、待っていますよ。ミア、どうかくれぐれもマーフィスに愛想を尽かさぬように宜しく、宜しくお願いします。」
二回宜しくされてしまった。そして、サーファスさんは、自身の空飛ぶ絨毯で飛んで行ってしまった。
「マーフィス?」
「うん?」
「気持ち的に、現地妻があちこちにいるみたいで面白くなかったけれど・・・って、えっ?」
今、マーフィスは両手で私の顔を挟んで、焦った表情をしていた。
「俺は浮気なんてしないし、現地妻だっていないからな?だから、俺を捨てるなんて言うなよ?って、何で笑うんだよ。俺は真剣にっ!!?」
私はマーフィスに、キスした。
「ミア?」
「誓いの口付け、まだだったでしょ?今日は私たちの結婚記念日になるんだもの。」
「ミア・・・そうだな。なぁ、ミア。俺はミアだけだから。だから、これからも宜しくな。」
「こちらこそ。」
手を繋いだまま、家へと向かう私たち。その後ろ姿を、微笑ましそうにサーファスは水晶球で見ていた。
「良かったですね、マーフィス。本物の家族が出来て。さて、目障りな虫が群がる前に牽制しておきましょうか。」
「相変わらず、マーフィスには甘いなぁ。少しはワシも甘やかしてくれてもいいだろうに。」
「何か仰いましたか?」
「ワシ、理事長なのに。」
「存じておりますよ。さぁ、仕事は山積みですよ?私が目を離した間、大層自由にされておいでの様でしたし今後はその分も精進して頂かないと。そうでしょう?」
「ゲッ・・・バレてる。」
「さぁ、キビキビと働いてください。夜明けまでは長いですよ?」
何処からか、悲鳴に近い声が上がった。