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特級錬金術師の旦那様

第11章 湖畔の町


「久しいな、マーフィス。」
「何か用か?」
「ズードジア様に何って口の聞き方。無礼だぞ。」

あ、傍にいるのは護衛?無礼ってことは、貴族かな。それにしても、ズードジアって名前・・・面白いからそう名付けたのかな?もっと他にカッコイイ名前は思いつかなかったのだろうか?

「育ちがしれているんだから仕方ない。その女は・・・依頼者か?」

さっきも同じ事を言われたな。マーフィスと行動を共にする女性は、そういう認識なんだな。

「アシアナは俺の婚約者になった。残念だったな。」
「そうか。」
「澄ました顔をしているが、内心は腸が煮えくり返っているんだろ?アシアナはいい女だからな。」

アシアナって誰?ジト目でマーフィスを見ると、私の視線に気付いたマーフィス。何かを察した様で、公衆の面前で私にキスした。

慌てたのは声を掛けて来た男性たち。私は暫し呆然。

「そ、そ、その女はマーフィスの何だっ!!」
「嫁だ。」
「嫁っ!!?お前はアシアナに恋慕していたのではなかったのか?」
「ある訳ねぇだろ。」

それはそれで厳しい物言いだ。でも、私としては嬉しい。嬉しいのだけど、目の前の人は驚き目を見開いていた。

「あのアシアナだぞ?確かに、その女も悪くはないが。」

あ、マーフィスが私を背に隠した。何処となく、不愉快さのオーラが出てる。

「他に用が無さそうだから、じゃあな。」
「ちょっと待て!!」
「俺の嫁に何かしようとしたら、物理的に消すぞ?」

アレ?今、寒い。凄く寒い。身体の芯まで凍えそうなのは気のせい?あ、温かくなった。私の変化に気付き、マントの中に抱き入れてくれた。

「貴様、ズードジア様に向かって!!」
「それしか言えねぇのかよ。ボキャブラリーの無いヤツだな。それより、こんな町中で遣り合うつもりか?」

確かに、周りにはギャラリーが集っている。

「覚えてろよ。」

あ、よく聞く負け犬のセリフ。本当に言う人がいるんだな。マーフィスは私を連れて、直ぐにその場から立ち去った。

「アシアナって、さっきの受付嬢のこと?低位ってことは、さっきの人は男爵か子爵ってとこかな?」
「その通りだ。言っとくけど、何もないからな?」
「その部分は分かってる。でも、あの面白い名前の貴族、何を言おうとしてたのかな。」
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