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特級錬金術師の旦那様

第11章 湖畔の町


すっかり涙目の私。

「見た目がグロテスクだから、怖がらせたか。だが、身の方は錬金術の材料になるんだ。」
「材料・・・。」
「まぁ、ミアはお嬢様だもんな。でも、貝殻だけで手に入れたら内側の膜が綺麗じゃないんだよな。・・・分かった、今回は止めておく。」

私の顔を見て、諦めたマーフィス。余程、顔色を失くしていたのだと思う。

「あ、串焼きだ。食べるか?」

別の出店には、確かに串焼きが並んでいた。でもどうして、どうしてあんな好戦的に見える海老なんだろう?あの海老のハサミ・・・どうしてあんな鋭利なの?そして大きいし。

それ以外なら、普通の見た目だけど。ちょっと怖い。マーフィスは二本買って、私の目の前でハサミを割っては食べやすい様に手を加えてくれた。

「身より、このハサミの方が美味いんだ。騙されたと思って食べてみろよ。」

マーフィスが捌いてくれたから、あの鋭利なハサミの殻はない。恐る恐る、一齧りしてみた。

「あ、甘いっ!?何コレ、凄く美味しいっ!!」
「きっと、身体の栄養の殆どがこのハサミにいってんじゃないかって、巷では噂になってる。何より、口に合って良かった。もっと食べるか?・・・ミア?」
「ねぇ、マーフィス。これは焼くだけ?」
「ん?あぁ、焼くか煮るかだな。」
「他の食べ方で食べてみたい。」
「分かった。じゃあ、買って行くか。」

海老の名は、リンリンと言うそうだ。あのハサミをカチカチ慣らす音が鈴の音に聞こえるらしい。ただ、そこそこ獰猛らしいので、収穫は大変だと言っていた。

「マ、マーフィス、そんなにたくさんは・・・数尾でいいよ?」
「ミアが作ってくれるんだろ?だったら、絶対に間違いないじゃないか。そうしたら、いっぱい食べたいに決まってる。」
「で、でも、口に合うかどうか分からないじゃない。だから、十尾くらいでいいんじゃない?」

収穫が大変だと言っていたから、価格が気になる。でも、マーフィスは私を宥めすかして五十尾も買ってしまった。

「もし気に入ったら、家で飼育してもいいかもな。余った部屋あるし、生け簀にでも作り替えてもいい。」

ん?家の中で生け簀?マーフィスの家って、本当に不思議だ。私には全然理解出来ない。

ただ、何気に向けた視線の先に、マーフィスを見ている男性たちがいた。あ、近付いて来た。マーフィスは・・・面倒そうな顔。




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