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特級錬金術師の旦那様

第9章 アリオン宅と媚薬


夜中、何気に目が覚めた。隣りにはいるハズの、マーフィスがいない。そして、シーツに触れれば冷たくなっていた。いなくなって、時間が経っている証拠だ。

慌てて飛び起き部屋を飛び出した。泣きそうになりながら、マーフィスの名を呼ぶ。すると、気の抜けたマーフィスの声が工房から聞こえた。

部屋に飛び込めば、ガラス瓶を手にしたマーフィスがいた。驚いた顔をして、私を見ている。

「ミア、どうかしたのか?」
「どうって、マーフィスこそ何をしているの?」
「何って、媚薬を作ってんだけど。」

そう言えば、そんなことを言っていたっけ。でも、何故こんな深夜に?

「匂いが作る側に、少ないなりにも影響が出るんだよ。」
「媚薬の匂いってこと?」
「そう。錬金術師の中には、耐性がないヤツらもいて影響受けたりすることもあってな・・・。」

気付いたら、目の前にマーフィスがいた。金色の瞳が、私を見下ろしている。少し普段と何となく違う気がする。そんなマーフィスの手が私の腕を掴み、引き寄せられる。

「マーフィスは耐性あるの?」
「どう思う?」
「少しいつもと違うみたいに見える。」
「・・・正解。」

耳元でそう囁くマーフィス。

「ミアに飲ませるものだから、いいものをと思って最上級のものを作ってたんだ。一応、俺にも耐性はあるけど・・・今回は丁寧に作り過ぎたかも。採算なんて度返しの材料だから。」

マーフィスの声が甘い。

「あ、あの・・・大丈夫なの?」
「う~ん・・・あまり大丈夫じゃないかも。ここまでのものは、俺も初めて作ったから。とんでもなくムラムラしてる最中。ミアっていい匂いするから、相乗効果?」

気怠気な声と吐息が、耳に触れる。思わずゾクリとすれば、マーフィスの柔らかい唇が私の耳を甘噛みする。腕の中から逃げようとしても、ビクともしない強い腕。

「ミアの全部、隅から隅まで舐め尽くしたい。」
「へっ!!?な、舐めって・・・。」
「もう一人の俺が、やっちゃえって言ってる。甘くて美味しいのだろうなぁ、ミアの身体。」

体が強張った時、咄嗟に腕が解かれた。

「だからさ・・・部屋に戻って、寂しいだろうけど一人で寝てくれ。辛うじて、俺の理性が残ってるウチにな。俺は薬を完成させないといけないし、ミアを置いて何処にもいかないから。分かったか?」

私は何度も頷いた。


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