第9章 アリオン宅と媚薬
「あ、これくらいはいいよな。」
「えっ?あっ!!!?」
額に触れた唇。
「次、来たら合意だと見做して襲うからな?」
金色の瞳は妖しく細められ、私は部屋から足早に出て行った。
寝室に戻るなり、ベッドに潜り込んだ。正直に言って、私もあの匂いに影響を受けていた。だって、マーフィスみたいにもう一人の私がマーフィスを受け入れちゃえって言っていたもの。
「は、恥ずかしい・・・。それに、マーフィスが格好良すぎだよ。ズルいよ、あんなの。」
最初から言ってくれていれば良かったのに。そんな嘆きを抱きつつ、私は何とか就寝。
そして翌朝。
「んっ、痛っ・・・ん?痛っ・・・えっ?」
視界の中に映し出されたのは、マーフィスの頭。
「マ、マーフィス、何してるの?」
マーフィスが顔を上げ、私の視線と合わさった時、昨晩と同じくゾクッとさせられた色気のある金色の瞳がそこにあった。
「何って、マーキング?」
「マーキングって何?って、マーフィス?」
「キスマークで気持ち抑えてる。」
「はい?今、何って・・・。」
胸元には幾つかの赤い痣。更に、増やそうとするマーフィス。きっと、首筋にも幾つも付けられているのだろう。
「ま、待って!!」
「どうして?」
「どうしてって、い、痛いし、恥ずかしいもの。」
マーフィスの瞳が、私をジッと見ている。
「さっき、解毒剤飲んだから、もう少しだけ我慢してくれないか?」
「解毒剤って、毒を飲んだの?」
「あ~、もうあの媚薬は二度と作らない。なぁ、頼むからもう少しだけ・・・。」
外なんかに行かれて大変なことになるのは避けたい。だったら、嫁として受け入れてあげなくてはならないのかもしれない。
「マーフィス、もう少しだけだからね?」
「分かってる。ありがとな。」
一時間ほどして、マーフィスは復活した。自分で付けたにも関わらず、驚いていたものの魔法で私の肌を治療してくれた。
「あ~、理性失くさずに済んで良かった。虚ろなままミアを抱いたら、後覚えてないとか考えられないもんな。勿体なさ過ぎる。」
「次からは予め教えておいてくれる?」
「そうする。満月の夜でしか作れない薬とかもあるし、これからは事前に話すよ。ごめんな?何か嫌な思いしてないか?」
もう一人の私の事は言わないでおいた。だって、もしあのまま・・・恥ずかしい。マーフィスが美男子で辛い。