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特級錬金術師の旦那様

第9章 アリオン宅と媚薬


だがしかし、お互いに嫁自慢が始まった辺りで私たちは止めておいた。ヒートアップしそうになったので。

「あぁ、そうだった。マーフィスのこと、探ってる奴がいるから気を付けておいた方がいいよ。」
「その情報って、あの人たちから?」
「まぁね。でも、マーフィスが後れを取ることはないだろうから、その事は心配していないんだけど・・・。」

アリオンが私を見た。さっきまでの、穏やかな眼差しではなく気遣う様な目を向けられていた。

「自分たちの保身の為に、ミアを利用しようと画策している輩がいるから気をつけて。」
「それって・・・。」
「愚者って何処にでもいるからね。マーフィスに任せておけば何も問題ないよ。綺麗さっぱり全てを更地にしてくれるよ。」

綺麗さっぱりの更地って怖いんだけど。でも、愚者って・・・あのバカ王子と家族のことかな。自尊心ズタズタにされた訳だものね、浮気相手に。

「あぁ、そうだった。子爵令嬢の事だけど、頑張ってマーフィスを探しているらしいよ。マーフィスの伴侶は私しかいないって言ってるみたいだけど、頭の弱い子って何処までも愚かで滑稽で笑えるね。」

アリオンは笑顔で毒づくキャラだった。それにしても、それを聞いたマーフィスの嫌そうな顔。

「ねぇ、マーフィス。そう言えば、どうしてあの二人がそういう関係だって知ってたの?」
「ん?あぁ、それは王城の適当なバルコニーから飛んだら、偶然、二人の情事が見えてしまったってだけだ。バルコニーで開放的に楽しんでいたからな。」

呆れて何も言えない。そんなの、他の誰かにワザと見せつけているんじゃないのかって思ってしまうもの。

「逃げ回るのは俺の性分じゃないから、いつかは分からせてやらないとな。ミアは俺のものだってこと。」
「マーフィスはそうじゃないとね。」

二人が黒い笑みを浮かべている。

その後、ヨキアの手料理をご馳走になった後、私たちは家路に向かった。

今日、アリオンから言われた情報を頭の中で反芻する。マルチアのマーフィスに対する執着は、前世を思い出させるには十分だった。

見た目が可愛らしくて庇護欲をそそる容姿。その事を本人も知っていて、それを最大限に活かせる立ち振る舞い。だからこそ、その周りで泣く女の子がいた。







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