第8章 依頼
そう言えば、思い出したことがある。前世の記憶だ。異世界転生した経緯。この世界でも、浮気されるなんてね・・・。私は付き合っていたと思っていたけれど、相手からすれば私の方が浮気相手だった。
段々と思い出して来た。そう言えば、事情を知った私にまだ関係を迫って来た元カレ。私を上手く丸め込んで、都合のいい女扱いしようとしたんだ。
まぁ、大人しくはない私が出した結果が今の異世界転生だ。そう言えば、浮気相手って今世の浮気相手に似てる気がする。だからなのか?マーフィスに興味を持ったのは。顔面偏差値の高い男性が好きだったものね。
でも、もしそうだとしたら・・・あの浮気男に逆切れされて、何かされたのかも?
そんなことを考えたら、マーフィスって優しいし顔もいいし仕事も出来るみたいだし。あ~、浮気相手の好みドンピシャだな。
毎日、独り言を話して畑に散歩に行って、パンのタネを作っての繰り返し。今日も誰かが奇声を上げながら、炎っぽいものと飛ばされていた事以外では代り映えしない。
「マーフィス・・・早く帰って来ないかなぁ。」
翌朝、違和感を感じて目を覚ました。視界に入って来たのは、見覚えのある腕。振り返れば、マーフィスがいた。少しやつれた様に見えるが、紛れもない本人だ。
「あれ・・・夢?夢にまでマーフィスが出て来る辺り、どれだけ寂しがってんのかって事よね。」
「寂しがってくれてたんだな。」
ん?目は閉じているけど、しっかりとした口調の声が聞こえる。あ、目が開いた。
「俺も寂しかったけどな。」
「マ、マーフィスっ!!本物?夢じゃないよね?」
「本物だ。一日早く帰って来た。ほら、体温感じるだろう?」
確かに、私の手に感じるマーフィスの引き締まった胸・・・胸?マーフィスは半裸で寝ていた。疲れで途中で事切れたらしい。目線を下げれば、下は履いていた。
「履いていて残念?」
「えっ?そ、そんなことはっ。」
「ミアになら見せてもいいけど、まだ起きたばかりだから驚かせるかも。」
「どうして?」
「大事なとこ、元気いっぱいだから?」
「・・・元気いっぱい?」
「まぁ、いいか。ほら、こんな感じ。」
何故?どうして?何事もないかの様に握らされたのは、マーフィスの大きくて元気いっぱいの大事なアレだった。