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特級錬金術師の旦那様

第7章 結婚指輪という武器


でも、こんな破廉恥な格好の人に笑われても・・・。興味無さげにしていると、どうやら勝ったとでも思ったのだろう。ギルド内にいる誰かを呼び寄せ、私に向かってこう言った。

「ちょっと頭の可哀想な子みたいだから、楽しくて気持ちのいい思いをさせてあげたら尻尾を振って付いて来るかもよ?」

随分な言い草である。眉間に苛立ちを現わせば、小馬鹿にした様に私を見た。

「目障りだから、早く連れて行ってくれない?」
「キャアアアっ、誰か助けて!!!この人たち、人攫いですっっっ!!!助けてください。私、売られてしまうわっ!!!」

取り敢えず悲劇のヒロインごっこを繰り出してみた。慌てた男の方は、私の口を塞ごうとしたけれど周りの注目を集めるには十分だった。

ギルド内と言うこともあり、スタッフらしき人たちが近付いて来た。そして、奥の部屋にいたマーフィスも飛び出して来た。

「マーフィスっ、助けて!!この人たちが、私を連れて行こうとするの。どこかで楽しいことといい思いをさせるとか言われたけど、絶対怖いことをするに違いないわっ!!!」

ここまで言えば、マーフィスにも意味を理解して貰えるだろう。全然言いなりにならないどころか、周りを巻き込もうとした私を見て苛立ったのだろう。

私に向かって大きな手が伸ばされて来て、思わず無意識に手が出てた。決して、殴ろうと思った訳ではない。でも、私の手から溢れる様に出て来たのは突風だった。

男もお胸がたわわのお姉さんたちも揃って、反対側の壁へと飛ばされて行った。三人は壁に激突しては、揃って倒れ込んでいる。

「えっ?これは・・・どういうこと?」
「よくやった。俺が言ったこと覚えていたんだな。怪我はないか?」
「マーフィス・・・うん、大丈夫。でも、これって・・・。」
「俺の可愛い嫁のミアに不埒な真似を働こうとしたヤツには発動する様に作られた、結婚指輪という名の錬金術の粋を集めた産物だ。いい働きをするだろう?」
「・・・えっと、死んでないよね?」
「あぁ、死にはしない。だって、こんな事で死なせたら、俺がこの手で分からせてやれないだろう?」

マーフィスの笑みが黒い。手加減させておいて、自らの手で完膚なきまでに痛めつけるとでも言っている様に聞こえるのは気のせいではないと思う。

「マーフィスが怪我するのは嫌だよ。」
「そんなヘマしねぇから。」


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