第7章 結婚指輪という武器
前世ではこんな綺麗な顔立ちの人は、身近にいなかった。それでも、マーフィスの普段の態度はあっけらかんとしたもので、つい男友達感覚になってしまう。
「さ、さっきの人たちはどうだったの?」
「何か礼をと言われたけれど、辞退しておいた。別に、それが目的で助けた訳じゃないから。」
「マーフィスがいいのなら私はいいけど。」
「じゃあ、そろそろ出立するか。」
再び貨物車に乗り込んで、目的地へと進んでいく。
「なぁ、ミア。さっきの商人たちが掲げていた旗を覚えてるか?」
「旗って、あの赤い色に植物らしきものの絵のこと?」
「覚えているのなら何より。あいつらには関わるなよ。」
「どうして?」
「奴隷商人だからだ。」
「えっ・・・。」
そ、そうか、この世界には奴隷がいる。関わることがなかったから、想像もしていなかったけれど。
「騙されて売られ兼ねないからな。俺を見て値踏みする目を向けられた時は、助けるんじゃなかったって後悔した。」
「じゃあ、さっきの馬車にはその・・・奴隷の人たちが乗ってたの?」
「あぁ。あの奴隷商人の一門はいい噂を聞かない。もし、もし何かあったら取り敢えず殴っておけ。いいな?」
「わ、分かった。って、私にそんな事出来るかな・・・。」
前世では、人を殴ったことなんてなかったしやれる気がしない。不安に感じていると、ニンマリと笑みを浮かべるマーフィス。
「その指輪、いい働きをするだろうから心配するな。」
「指輪?」
左手の薬指で光る指輪に目を向けた。よく意味が分からないけれど、マーフィスが言うならそうなんだろう。
「うん、分かった。」
「素直で可愛いな。」
二人の旅路は不便もなく、楽しい時間だった。そうして三日目には目的の町へ到着した。この町には、何人かの錬金術師が住んでいると言う。
そして今、私たちは冒険ギルドに来ていた。冒険ギルドでは、絡まれるというお約束的みたいな状況になっていて・・・今回は、お胸がたわわな薬師のお姉さんに私は見下ろされていた。
「貴女・・・マーフィスの何なの?」
「妻ですけど。」
「嘘仰いっ!!!」
いきなりの嘘つき扱い。私に反論の間を与えることなく、目の前で私を罵ってくれるお姉さん。今後も、こんな絡み方をされるのかもなぁなんて考えていると、更にもう一人追加されたお胸がたわわなお姉さん。
私の胸元を見て、鼻で笑った。