第1章 恩賞
ここで終われば、まぁ、ある意味ハッピーエンド?しかし、空気を読まないのはヒロインだった。
「お待ちください!!ローンベルク様は、第二王子の婚約者です。ですから、代わりに私をお連れいただけませんか?」
誰もが驚いた。ヒロインことマルチアの放った内容に。そして、一番の驚きようは第二王子。今の今まで、仲睦まじい姿を周りに見せていたんだ。それなのに、マーフィスの容姿を見て心変わりをしたヒロイン。
「俺は他人の手が付いた女には興味がない。何なら、昨晩の仲睦まじい姿を国王に見せれば俺の言葉を信じると思うが。」
二人の顔色が変わった。その姿を見て、誰もがその意味を察したのだろう。そして、言い訳をしようともあの時計を使えば証拠は押さえられる。
「ミアは・・・ミアは、その者の容姿を見て心変わりをしたのか?私の事を、ずっと好いていただろう?」
元婚約者であるアルベルトが、憎々し気に私を見ている。
「貴方を好いたことなど、一度もございません。ただ、与えられた使命を果たすのみ。それだけです。ですが、その任も解かれました。私は私だけを求めて下さるマーフィス様に、私の未来を捧げようと思います。今までありがとうございました。」
「私を裏切るのか?」
「おや、先に裏切った事をミアだけではなく周りに見せびらかせていたのはご自身だろう?」
マーフィスの突っ込みに、苦々しい顔をする王子。本当、父親以上に嫌い。誠意の欠片すらない人なんて、私からすればどうでもいい存在。
「ミア、どうする?一度、家に戻るか?別れを惜しむ時間くらいは作ってやる。」
「いいえ、必要ございません。」
「ま、待ってくれ。そうだ、どうか今晩だけでもこの王城で休まれてはどうだ?旅の疲れもあるだろう。」
「必要ありません。次に求めるものがありますから、私たちはこれで失礼します。行こう、ミア。」
マーフィスに手を引かれ、バルコニーへと出た。マジックバックから布地を出して広げ、その上へと私を伴い乗り込めば自然と浮かび上がった。
驚く私はマーフィスに支えられ、その場にしゃがみ込んだ。フワフワのいい感触の絨毯だ。
「凄い綺麗な絨毯?フワフワで気持ちいい。」
「これも俺の作ったものだ。気に入ってくれたみたいで何より。さ、行こうか。」