第1章 恩賞
私たちの行方末を見上げているのは、焦った様子の国王様と王子や父たち。私は一瞥しては、今まで苦しめられて来た皆に向かって笑顔で手を振った。
二度と会いたくないと、気持ちを込めて。
そんな私を見たマーフィスは、さっきから意外に笑い上戸なのか笑っている。何なら、よくやったとまで言われた。
「ねぇ、笑い過ぎだと思うのだけど。」
「嫌、だって一国の国王たちもいるのにあのイヤミの籠った笑顔は・・・。」
まだ笑っている。少々、不貞腐れているとマーフィスに肩を抱き寄せられた。
「ここから山間部に入る。夜風は冷えるから、俺の傍にいろ。」
マントの中に抱き入れられ、免疫のない私は心拍数が爆上がりする。その音を聞いたからか、マーフィスの目が丸い。
「ひょっとして・・・緊張してるのか?貴族って密着してダンスとか踊るんだろう?」
「婚約お披露目の時に踊った一回だけよ。」
「そうか。でも、約束通りに俺はミアだけを大事にする。」
「浮気なんかしたら許さないんだからね。」
「しねぇよ。こんなに面白くていい女見つけられたんだ。絶対離さないから覚悟しろ。」
いい女は兎も角、最初に面白いとはどういう意味?恨みがまし気な眼差しを向けると、それに気付いたマーフィスが私を見た。
「ん?あ、アレか。」
アレ?アレとは?そう思った次の瞬間、私の唇は温かい感触。キスされているのだと分かったのは、少しして。
「お、おい、大丈夫か!!?」
だから、免疫がない私はそのまま意識を手離すことになった。無駄に格好いいんだから、お手柔らかにお願いしたい。
少々焦ったマーフィスだったが、気絶してしまった私を優し気な眼差しで見ては頬擦りした。
「可愛いヤツ・・・。俺の顔を見て、こんな砕けた話し方するヤツは初めてだ。面白いって俺にとっては最高の誉め言葉なんだけどな。師匠からも、早く嫁を貰えって言われていたからこれで五月蝿く言われなくて済む。でも・・・起きたら、ミアはきっと怒るんだろうな。ま、それも一興か。」
ご機嫌で山間部にある湖畔に降り立てば、一軒の家へと入った二人だった。