第7章 結婚指輪という武器
「ねぇ、マーフィス。町には立ち寄らないの?」
そう、今はある途中にある町に立ち寄ることなく通り過ぎている。マーフィスには家もあるから、宿泊の為に立ち寄る必要はない。
「ん?そんなことしたら、ミアとイチャイチャ出来なくなるだろ?必要なものに不足はないから問題ない。ほら、俺を見て口を開けろ。やっと、深いキスも耐えられる様になったんだ。」
ギャラリーはたまにすれ違う商人か旅人、そして出没する魔物である。キリアの町を出て二日目。マーフィスから四六時中キスをされて、唇が腫れそうである。
「まだ、だろ?」
押し倒さんばかりの勢いで、キスを止めようとしないマーフィス。これは旅だと言えるのだろうか?そんな事を思いつつも、ついマーフィスを受け入れてしまう辺りかなり懐柔されている。
「ったく、本当邪魔だよなぁ。」
マーフィスの瞳に、何かが映っている。
「あ、あれって・・・。」
「商人だろうな。魔物に襲われてる。」
「そんなっ、ど、どうしよう?」
「ミアは貨物車の中にいろ。」
マーフィスは貨物車を停め、空飛ぶ絨毯に乗って襲われている商人たちの元へと飛んで行った。遠目だけど、アレがよく耳にするゴブリン(小鬼)と言われている魔物だろう。
貨物車は岩陰に隠されているので向こうからは見えないだろうが、私は怖くて震えていた。微かに、何かの叫び声や奇声が聞こえて来る。
ゴブリンって女性を襲って、子供を孕ませたりすると聞いたこともあるし集団だと危険だ。マーフィスが怪我なんかしたらと思うと・・・。
少しして辺りが静かになり、マーフィスが無傷で戻って来た。思わずマーフィスに抱き付く。
「怪我はない?大丈夫?」
「ミア、震えているじゃないか。怖かったのか?俺なら何も問題ないから。」
「良かった・・・。」
ホッとした私だったが、マーフィスが真顔で私をジッと見ているので疑問符を浮かべて見つめ返した。
「・・・ミアのその気遣いって、作為が欠片も見えないんだよな。」
「えっ?どういうこと?」
「俺を見て金蔓かこの顔に興味あるかの何方かでしか、価値を見ない奴らばかりだったから。それに・・・俺を見て、色も見えない。まぁ、その部分は納得できないけど。」
色って、男女のそういう色的な意味?想像して、私の顔に熱が浮かぶ。
「あぁ、やっと俺が男だって思い出したんだな。」