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特級錬金術師の旦那様

第6章 貴族令嬢の思惑


だがしかしだ。そうは簡単に物事はいかないのが世の常である。

食料などを買い込み、空き地へと戻ってから一時間後程のこと。マーフィスは私の膝枕で、行き先を思案している。

「その前に、あの依頼だけは片付けとかないとなぁ。」
「どんな?」
「半年に一度収穫出来る、薬草があるんだ。一応、ウチの畑で栽培はしているんだけど、収穫出来るならもしもの為にやっておきたい。」
「薬草って、どんな効能があるの?」
「エリクサー(完全回復薬)の材料の一つだ。他にも希少な材料が必要だけどな。」

そっか、マーフィスは錬金術師だ。薬も作るんだよね。それに、エリクサーって超貴重な薬だと聞いた。

「この町からどれくらい?」
「キリアからだと、三日くらいだな。ミアを歩かせる訳にはいかないから、馬車を使うか。」
「乗合馬車?」
「ん?そんな危険なものに乗せる訳がないだろ。俺が作った馬車に決まってんだろ。」

この人は、もう何でも有りなのだろうな。

「マーフィスに任せるよ。旅なんてしたことないし、ごめんね?何も出来ない私で。」
「嫁と二人きりの旅行だぞ?楽しくない訳ないだろ。それに、何も出来ないって言うがそんな事ないぞ?」

マーフィスは私の作るパンが大のお気に入りだ。イケメンを最大限に見せつけておねだりするマーフィスに私は成すがままだ。

「あの酵母ってのも、登録したから心配ないしな。もう、あんな不味いパンもどきは食べたいとは思わない。」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど・・・。」
「お互いに出来ることをすればいい。それに、俺としても可愛い嫁に頼られるのは嬉しいんだよ。」
「ズルいよ、そういう言い方されたら何も言えない。」
「甘えておけばいいんだよ。明日は長距離の移動だ。少し早いが休むか。」

ベッドに横になった私たち。

「ねぇ、マーフィス・・・マーフィス?」

直ぐ傍にある顔を見上げれば、黄金色の瞳は閉じられていた。そして私はと言うと・・・この羽交い絞め状態で眠らないといけなくなった。

緊張感はやがて、規則正しいマーフィスの鼓動に癒され眠ってしまう私。穏やかだった。そう、穏やかだったのに・・・。


誰だよ、外で野太い声で叫んでいる人は。心なしか、数人の声が聞こえる。

「・・・ん?」
「起きたのか。って、こんな騒がしくされたら起きざるを得ないよな。」

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