第6章 貴族令嬢の思惑
ジト目でマーフィスを見ていると、怪訝な顔をしている。
「何だよ。言いたいことがあるなら言えよ。」
「ちょっぴりヤキモチ妬いただけだよ。」
「ハッ?って、いきなりこのタイミングで可愛いこと言うなんて反則だろ。兎に角、何もねぇから。」
「うん、それは信用してる。でも、気持ちは別物だから。マーフィスだってそうじゃないの?」
少し考え込んでから、こう言った。
「どう転んでも、ミアに如何わしいことをしたら滅ぼす。この世界から。」
いい笑顔で言い切ったマーフィス。
「ねぇ、マーフィス。」
「何だよ。」
「この国、いつ出るの?」
「行きたいところでもあるのか?」
「色んな国や町を見たいなぁって思って。この国では、籠の中の鳥だったから。」
「分かった。ギルドに挨拶してから、直ぐに出立しようか。採集の仕事があるからな。」
だが、いざギルドに行くと・・・引き留められた。理由は、我儘貴族令嬢がもっといい宝石が欲しいと駄々を捏ねたからと言う理由で。
マーフィスは興味なさそうに、宝石の採掘の依頼を右から左に聞き流している。他の冒険者にもこの話しはしたらしいのだけど、だからと言って貴族の令嬢のお眼鏡に適うものが得られるとは限らない。
「聞いてます?マーフィスさん。」
「そもそも、俺じゃなくてもいいだろ。他に依頼を受けた冒険者がいるんだし。それに、俺は明日にでもこの町を出るつもりなんだ。」
「それは困ります!!」
「俺は困らない。」
「そんな・・・。」
「第一、冒険者としても錬金術師としても俺は自由だ。誰にも制限される謂れはない。」
マーフィスは私の手を掴み、ギルドから出た。町の中を足早にどんどん歩いていく。そんな中、躓いた私にマーフィスは足を止めた。
「悪い・・・早く歩き過ぎた。」
「マーフィス・・・怒ってる?」
「この世界で自由を掴む為に、多大な経験を積んで来た。それだけが理由だと言ってもいい。周りの圧力に屈しないでいられる様に・・・。」
「私はマーフィスの意思に賛同する。私に出来ることがあるのなら、何でも言って欲しい。夫婦だもの。」
「そうだな。昔を思い出して・・・嫌、あの頃の俺は終わったんだ。明日に出立するなら、買い物しておくか。」
気を取り直したマーフィスは、さっきまでの不機嫌さは消えた様だ。ギュッと手を握り締めれば、口元を綻ばせたマーフィスの横顔が見えた。