第6章 貴族令嬢の思惑
「・・・?えっ?うわああああっ!!?ぐえっ。」
昨日と同じシチュエーションで驚いたけど、起き上がることは出来なくて腹部に回されたマーフィスの腕の圧で吐きそうになった。
「ゲホ、ゲホ。苦しっ・・・。」
「朝から元気だな。」
「マーフィスのせいだよ。」
「コラ、横腹つねるな。」
「細やかな反抗だよ。」
「あ~、じゃあ物理的にお仕置きだな。な?」
身の危険を感じて離れようとしたのに、その願いは叶わなかった。じたばたしても、ビクともしない。
「いい加減大人しくしろ。」
押さえつけられ見上げれば、上からマーフィスが見下ろしていた。思わず身の危険を感じてしまう。
しかし、そんな何とも言えない空気感を壊したのは、昨日の超音波を発していた女性だった。昨日あんな目に合ったのに、懲りなかったらしい。
「こいつも、朝から元気だな・・・。ま、ミアとは違って全然可愛くねぇけど。あ、遠慮なくやってくれな~。」
ん?誰に言ってるんだろう?あ、何か外で超音波から奇声に変わった気がする。心なしか、風の音も聞こえる。
あぁ、奇声の音量が小さくなっていった。きっと、何処かに放り投げられたのだろう。
「って、何時までこうしてるつもり?」
「そうだなぁ・・・やっぱり、お仕置きしてからだな。」
いきなり首筋にマーフィスの顔が近付き、ザラリとした感触の後小さな痛みを感じた。舐めたの?齧った?噛んだ?中々のパニックに陥った私。
「ずっと、ミアを抱いて寝るから一々反応するなよ?次やったら、その首筋に付けたキスマーク増やしていくからな。」
黄金色の瞳を細め、妖しく笑うマーフィス。ねぇ?今、何って言ったの?キスマーク?えっ?今の小さな痛みってそれなの?そうなの?
「マーフィスが・・・マーフィスが虐める。もう、お嫁に行けない。」
「嫌、俺以外の何処に行くつもりなんだよ。そもそも、行かせる訳ねぇだろうが。」
「そうだった・・・。もう、お嫁に行ったんだった。」
朝からコントの様なやり取りをしてから、起床した。ネタ切れと言うか、これ以上続けると身の危険を本当に感じそうになったので。
「それより、さっきの来客は追い返して良かったの?」
「面倒だからいい。アイツ、俺にベタベタ触って来るし、油断したら大事なところまで弄られ・・・あ、今のはなし。」
「弄られたの?」
「そんなヘマしねぇよ。」