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特級錬金術師の旦那様

第5章 冒険者と住人


マーフィスはまるで心当たりなどないという顔をしている。だから、昨日の来客の特徴を話した。

「あぁ、来てたのか。」

ん?それだけ?

「どういう人なの?」
「どうって・・・娼館で働く従業員?」
「娼館・・・。」
「昨日のあいつとは違う娼館だ。たまに、薬を売ってる。」

娼館で働く人に薬?体調不良の為か、もう一つの理由かは分からないけれど、お客さんだったのね。

「色々と夜伽の話しを聞かされることはあるが、俺が客になったことはないからな。あまり大きな声で言えることではないが。」

そうか、マーフィスも経験がないのか。でも、知識だけはあると?ちょっと負けた気分。

「あの家で寝泊まりしないと、普通の宿屋では寝込みを襲われたりするからな。身の安全の為に、この家を作るのを頑張った。それに比例して、冒険者としてのランクも上がったんだ。」
「寝込みを襲われたことがあったの?」
「あぁ、何度かな。その度に返り討ちにしてやったが。みんな目がギラギラしてて殺気より面倒なんだ。あ、あの細工良くないか?」

ある店先で見つけた髪飾り。銀細工で出来ていて、青い小さな石が付いていた。

「うん、素敵だね。可愛い。」
「じゃあ、買おうか。」
「ううん、家にたくさん素敵なものをマーフィスが用意してくれているんだから大丈夫。」
「そうか?遠慮しなくていいんだぞ。」
「ううん、本当に大丈夫だから。次に行こう?」

次に興味が注がれたのは、布地屋だった。既製品の洋服もたくさん並んでいたが、どちらかと言うと布地の方に心を奪われる。

「布地?」
「うん、素敵だなぁって思って。」
「それに似たデザインなら、色違いで家にあるぞ?」
「えっ、そうなの?」
「その布地、俺がこの店に卸したヤツだからな。ほら、その横の布地はミアのワンピースと色違いであるだろ?」

本当だ。ワンピースは菫色だけど、この布地は華やかなオレンジ色だ。

「気に入ったのなら、家で作ってやるよ。」
「あ、ううん。私はあの菫色の方が好き。」
「そうか?ミアは欲がないなぁ。」

私は何気なく値札を見て、目が飛び出しそうになった。うん、きっと素材がとっても高価なのだろう。そう思うことにした。

良かった・・・欲しいなんて言わなくて。

「マーフィスさんっ!!ウチのお店に来てくれたんですか?だったら、声を掛けて・・・。」




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