第5章 冒険者と住人
「マーフィス、久しぶり。さっきは、アルベルが悪かったね。悪い奴ではないんだけど、少々頭が弱いところがあるから見逃してやって欲しい。」
「ニーシアか。しっかり、あいつの手綱掴んでおけよ。」
「分かったよ。それと、僕には紹介してくれないの?マーフィスの愛妻なんだろう?」
「俺の嫁のミアだ。ミア、こいつは紅蓮の魔術師と異名のある魔術師で冒険者のニーシアだ。さっきのヤツと他にもメンバーがいるが【不死鳥(フェニックス)】の一員だ。」
あ、厨二病的な名前。紅蓮と言うから、火の魔法が得意なのだろう。良かった、マーフィスにそういう名前がなくて。
「初めまして、ミアです。」
「ニーシアだよ。よろしく。さっきは、ウチのおバカがごめんね?」
「いえ、本当のことですから気にしていません。」
「僕はそうは思ってないよ。だって、マーフィスが選んだんだから。きっと、何か素晴らしいものを持っているんだと思う。それに・・・。」
あ・・・視界をマーフィスが遮った。
「ミアは俺の嫁だ。無闇に近付くな。お前だとしても、ミアに何かしたら容赦しないからな。」
「男の嫉妬は見苦しいよ。ねぇ?ミアちゃん。」
この人も分かってて、マーフィスを煽らないで欲しい。
「マーフィス、こっち向いて。」
「何?・・・っ!!?」
私はおかしくなっていたんだと思う。人前で、熱烈なキスシーンを披露してしまったのだから。
「落ち着いた?」
「う、うん・・・。」
「アハハ。これはいいや。あのマーフィスが可愛い奥さんに言い負かされてるなんて。いいもの見せて貰ったよ。」
「ニーシアさんも、あまりマーフィスを煽らないでください。」
「それは約束出来ないかなぁ。だって、僕もミアちゃんに興味持ったから。今日はこれで引き上げるけど、今度デートでもしようね。」
言い逃げされる形で、ギルドから出て行ったニーシア。マーフィスを見れば、物凄く驚いた顔をしていた。
「マーフィス、どうしたの?」
「ニーシアって、頭も良いしフェニックスのリーダーで人望もある。それにあの物言いだから、女にも人気があって・・・。」
どうやら、激しく動揺しているらしい。
「でも・・・あの人は、マーフィスじゃないから。」
「えっ?」
「あの時に声を掛けて来たのがマーフィスじゃなかったら、私は一人であの場から逃げ出してたと思う。」