第3章 鉱山の町と細工
「部屋で休んでろ。」
「マーフィスは?」
「俺は作業がある。黄色の部屋にいるから。」
「そ、そうだよね。マーフィスは忙しいんだよね。」
「そういう訳ではないんだが。どうかしたのか?」
この空き地へと向かう中、あちこちから注目を集めた。ただの好奇の目もあれば、女性陣からの嫉妬の眼差しも多数。私にはマーフィスしか頼れる人がいない。
だから、急に怖くなった。あれ?気付いた時には、マーフィスの腕の中にいた。
「俺にミアがいる様に、ミアには俺がいる。だから、そんな寂しそうな顔をするな。」
「えっ?私・・・そんな顔してた?」
「してた。一緒に来い。」
黄色い部屋に連れられ、二人掛け用のベンチに座らされた。
「少し音はするが、ここで休んでろ。」
マントを脱いでは、私に被せてくれ頭を一撫でされた。
「二時間ほどで終わるから。」
触れるだけのキスをしては、作業台の椅子に座ったマーフィス。私はそんなマーフィスの姿を暫く見ていたが、いつの間にか眠ってしまった。
次に目覚めた時には、作業台のところにマーフィスはいなかった。代わりに、直ぐ隣りにいた。閉じられていたマーフィスの目が、スッと開いた。
「体調はどうだ?」
「あ、うん。大丈夫。マントありがとう。作業は終わったの?」
「あぁ、そこにあるだろ。」
マーフィスは私の腕を見た。私の腕には、あの淡く光る真珠の球に細工がされたブレスレットがあった。
「凄く綺麗・・・これって、あの真珠?」
「あぁ、ミアに似合うと思ってな。気に入ったか?」
「うん。凄く綺麗。ありが・・・ねぇ、本当に私が貰っていいの?こんな素敵なブレスレット、凄く高価でしょ?私ばかり貰って色々お世話までされてるのに私はマーフィスに何も返せてない。」
「嫌なこと思い出させるが、あの王子から色々貰ってたんじゃないのか?」
私は首を横に振った。
「花束と定型文のメッセージカードだけだったわ。確かに、婚約した最初だけは、ドレスは贈られた。でも・・・あの人は、私に興味無かったから。」
「そうか。なら、俺がその分もミアに贈り物をする。それに、俺たちは夫婦だ。もっと欲しいって言ったっていいんだぞ?まぁ、王城に住まわせてやることは出来ないが、それ以外のものなら何だって用意してやる。」
「ありがとう、マーフィス。でも、私はそんな欲張りじゃないわよ。これで十分。」