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特級錬金術師の旦那様

第20章 聖女


私に向けられた言葉は、辛辣なものだった。

「だったら何だ?」
「考え直せ。」
「世話になった。」
「マーフィスっ!!」
「俺はミアさえいればいい。」

マーフィスは腰から下げていた勾玉を外し、その場に放り投げた。

「じゃあな、師匠。」

私の手を引いては、背を向けたマーフィス。私は事の展開に付いて行けない。

「マーフィス・・・。」

震える声でマーフィスの名を呼ぶ。

「悪いな、ミア。でも、後悔なんてないんだ。」
「でも・・・。」
「一目、ミアを見せられた。俺はそれだけでいい。でも、嫌な言葉を聞かせて悪かった。それに・・・俺は元々、ここから出たいと思ってたんだ。」
「どうして?」
「閉鎖的だからだ。錬金術師同士の横の繋がりは太い。でも、いつまでもそれだけじゃダメだろ。」

そう言えば、マーフィスには錬金術師以外の知り合いも多かった。

「純粋に、俺は自由が欲しかった。俺の我儘に付き合わせて悪いな。」
「ううん。そんなの全然いいよ。夫婦だもの。」
「ありがとう、ミア。」
「ねぇ・・・あの人のことも良かったの?凄く美人なのに。」
「美人って、ミアのことを言っているのか?」

そうじゃない・・・でも、マーフィスらしくてそれ以上は何も言わなかった。

「アリオンと合流することになってる。行き先は同じだ。」
「えっ、アリオンさん?」
「黙ってて悪いな。俺とは考え方が同じで、いつか一緒に行ければいいなと思うところがあるんだ。」
「じゃあ、アリオンさんも?」
「俺と同じだろうな。」

私たちが向かった先は、世界の果てと言われている陸の奥地にある最後の町【エメルア】。


「で、どうして貴方がいるんですか?」
「おや、私を置いていくつもりだったのですか?酷いですね、マーフィス。」
「でも、サーファスさん、学園は・・・。」
「辞表を出して来ました。もう私は、ただのサーファスです。一介の錬金術師です。私が同行するのは迷惑ですか?」
「いえ、心強いです。ただ・・・学園が大変だろうなと。」
「サーファスさんは、昔からマーフィス大好きだったものねぇ。僕はちょっと想像していたよ。」

三人で和気藹々の談笑中。

「あぁ、そうそう。聖女のことなんだけど。強かというか・・・王族に輿入れするらしいよ。僕たちと天秤に掛けて、選んだみたい。本当に迷惑な存在だよね。殺す訳にはいかないし。」
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